「ふふっ、イザベラ様、可愛いですわね。今、あなたの目の前で、あなたの婚約者であるルブリス王子を引き摺り下ろす計画をしているのですよ。イザベラ様の様子からルブリス王子に想いがないのは薄々感じていましたわ。彼が国王にならなければ、あなたは王妃になれなくなるかもしれないけれどそれでも良いのですか?」

レイラ王女は心から楽しそうに私に笑いかける。

「王妃になりたいとは思っていません。できればルブリス王子殿下との婚約も解消したいのですが、私にはどうすることもできないのです」

予定通り卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されなくても、私はルブリス王子の高圧的な雰囲気が怖くて仕方がない。
物言わぬ人形のような王妃で十分だと言われても、彼のような人と一緒にいたくないのだ。

「王妃になりたくない、女性など存在するのですね。僕はイザベラ様は噂とは違い落ち着いていて、品位があり王妃の器だと思います。でも、レイラ王女、あなたと共闘してライ国の国王になるのも面白そうですね」

エドワード王子のいう噂とは、いつも取り巻きとお茶会をしている悪役令嬢イザベラの噂だろう。
私が彼女に憑依をしたのだから、以前の彼女とは違うと感じて当然だ。


「エドワード王子殿下、やっと私に興味を持ってくれましたね。早速、国王陛下と相談して婚約話を進めましょう。イザベラ様は再来年からアカデミーに通うのでしょう? 良かったら交換留学制度を利用して2年生までルイ国で私と姉妹のように過ごしませんか? サイラスお兄様も2年間はライ国で学んだのですよ。ルブリス王子殿下を2年間放し飼いにしておいたら、浮気でもしてくれるかもしれません。ライト公爵家の一人娘を蔑ろにして、そんなことをしたら当然批判が起こります。王子様はアカデミーではモテモテになりますから、婚約者不在でルブリス王子殿下が過ごせばハイエナのような女たちが集ってきますよ」

レイラ王女がサイラス王太子殿下を見ながら言う。
きっと彼もアカデミー時代モテモテだったのだろう。

「サイラス王太子殿下も、おモテになったのでしょうね」

私は思わず呟いていた。