ふと、その顔を見てみた。

端正な顔立ちだった。

とても綺麗で、誰もが見惚れてしまいそうだった。


「大丈夫ですか……?何かあったのでしょう?」

「っ……」


なんで、そんなこと聞いてくるの?

もしかして、バカにしてる……?


湊人とはちがう、この人の黒に染まり切った髪の毛が揺れる。



「……優しくしないでください……」


口から出たのは、そんな可愛くない言葉だった。


「私これから地獄を見るんです。好きでもない男と結婚して、嫌なしきたりに従って……生きてかなきゃいけないんです!!」