「……じゃあ、私が連れ出してあげようか?」
にっと微笑みながら、そんなことを言ってきた彩に心が揺らいだ。
「お前には無理だろ」
そんなそっけない言葉を、苦笑いに混ぜて送った。
「そんなことないよ、私強いし」
「そうかよ」
昔から、彩は眩しいな。
小さい頃から厳しい親。唯一の癒しはたまたま屋敷を抜け出した時に出会った水無瀬彩だった。
最初は顔面がいい女としか思っていなかったけど、気がついたらその優しさに惚れてしまっていた。
単刀直入に言えば、今年で片思いを拗らせて11年になる。
やっと……手に入れられたんだ。
だけど、自由なんてものはない。きっと彩にもこの先辛い思いをさせてしまうだろう。
そんなの、望んではいない。
ただ……目を離したら、どこかへ消えてしまいそうで手の中に閉じ込めていたかった。
とっくに……俺は嫌われてしまっているようだったが。