博雅の事があってから、数週間後。
帝の使いが、晴明の屋敷に向かっていることを、珱姫の式神が察知した。
「珱姫様。」
「何?
どうしたの?」
「帝の使いがこちらに向かっています。
しかも、牛車が2台…。」
「分かったわ。
ありがとう。」
珱姫は、すぐに晴明に話した。
「牛車が2台…?」
「はい。」
「誰が来るんやろ…。」
「分かりません…。
探りを入れましょうか?」
「そうしてくれる?」
「分かりました。」
珱姫は、早速式神達に命を出し、牛車2台のことを調べ始めた。
「珱姫様。
牛車のことが分かりました。
1台は晴明様。
もう1台は珱姫様の牛車でした。」
「では、わたくし達2人を迎えに来ようとしていると言うこと?」
「はい。」
「そう。
分かったわ。
ありがとう。」
珱姫は、晴明に伝えた。
牛車が晴明の屋敷に着いた時、晴明と珱姫が出迎えた。
「晴明、珱姫。
すぐに帝の元へ参られよ。」
2人は素直に牛車に乗った。
帝の元に着いた時、帝は2人を大歓迎で迎えた。
「晴明、珱姫。
よく来てくれた!」
「帝!
そのお顔は?!」
「晴明。
よくぞ聞いてくれた。
実は…ここ最近、眠ると何者かに首を絞められているのだ。」
晴明も珱姫も驚いた。
「晴明…。
珱姫…。
誰が首を絞めているのか、調べてくれぬか?」
「分かりました。
僕と珱姫で探します。」
「おおっ。
助けてくれるか?
晴明。」
「帝の命とあらば。」
「早速、今日から調べて欲しい。」
「分かりました。
珱姫。
帰って準備して戻ってこよう。」
「はい。
晴明様。」
晴明と珱姫は、一度戻ることにした。
屋敷に着き、牛車から降りると、使いの者が晴明達に二刻後に迎えに来る。と言った。
二刻後、帝の使いが迎えに来た。
2人は牛車に乗って、帝のとこに向かった。
「帝、今回、僕らの考えてる作戦は、帝の依代を布団に置き、帝は珱姫と隠れていてもらいます。
隠れているときは、物音も声も出さぬようにお願いします。」
「皇子にやったのと同じだな。」
「そうです。
ただ、ここからが違います。
帝には、物音や声を出さずに、帝の依代に恨みを発散しているものを、見て欲しいのです。」
「近づけと言うのか?!」
「いいえ。
珱姫の式神を通じて見ていただきます。」
「なるほど。」
「誰が呪っているかは、その者が去った後に教えてください。
絶対に、物音と声を出さぬようにお願いします。」
「分かった。
約束しよう。」
「では、僕らはこれから準備に入ります。
帝は珱姫の指示に従ってください。」
「分かった。
珱姫、どうしたら良いのだ?」
「では、こちらで裸になってください。」
「裸?!」
「はい。
祝詞を直接体に書きますので。
脱いでください。」
「分かった。」
珱姫は、帝の裸に祝詞を書き始めた。
晴明は、結界を張り、依代に術を施した。
丑三つ時。
帝と珱姫は隠れ、晴明は布団の側で祝詞を、唱え始めた。
すると、廊下から、絹の擦れる音がし始め、帝を呪っている者が、帝の部屋に入ってきた。
珱姫は、お酒の式神を出した。
式神は、呪っている者の近くまで行き、顔をお酒に映し、珱姫の元に帰ってきた。
帝を呪っているものは、帝の依代の隣に寝転び、帝の依代に話しかけ始めた。
「帝…。
どうして、妾のとこに来てくれぬのですか?
和子や綾子姫がそんなに良いのですか?
妾の事は忘れてしまわれたのですか?
お答えください。
妾は、帝の元にいても良いのですか?
愛しい帝…。
何故、何も答えてくれないのです?
口を聞くのも嫌なのですか?」
帝を呪う者は、どんどん顔つきが変わってきた。
そして、般若のような顔で、帝の首を絞め始めた。
「何故、来てくれないのです?
何故、何も答えてくれぬのです?
何故、妾のことを無視するのです?
帝が宮廷に呼んだのに…。
酷すぎます…。」
帝を呪う者は、散々、帝を甚振りながらも、愛おしくしたり、情緒不安定なままだった。
「帝…。
明日も来ます。
その時は、愛してください。」
帝を呪う者が帰ろうとした時、珱姫は富士の式神を出し、帝を呪う者に着けた。
帝を呪う者が、帰ってから、帝に帝を呪う者の顔を見せた。
「これは…!!
しずか!!」
「しずか殿…。
僕も長いこと帝に仕えてますが、しずか殿を見たことも、聞いたこともありません。
どなたなのです?」
「わたしがこの都に呼んだ者だ。
綾子姫に子が出来るまでは、よく通っていたのだが、綾子姫に子が出来てから通わなくなり、和子に皇子が出来てからは、綾子姫のとこにも通わなくなったくらいだ。
しずかの事なんて忘れていた。」
「帝、しずか殿は、まだ、救いようがありますが、このままの状態では、救えなくなるようになります。
救うか、救わないか、お決めください。
それによって、僕らも対応を考えます。」
「救えるのか?!」
「まだ、救えます。」
「ならば、救ってくれ!
しずかは、綺麗な子で、わたしのお気に入りなのだ。
ただ、子が出来なかっただけで…。」
「分かりました。
お救い致しましょう。
珱姫。
式神は?」
「抜かり無く、お着けさせて頂いております。」
「ほな、しずか殿の事は、珱姫に任せてええ?」
「はい。
まずは、しずか様にお会いしてきます。
帝の命と称して。」
「分かった。
そうして。
帝、しずか殿に帝自身が、お会いできますか?」
「勿論だ。」
「では、珱姫の報告を聴き次第、お会いしてください。
お会いしても、呪われていること、今日の事などはお話ししませんように。
もし、話してしまうと、助けれなくなるかもしれません。
今まで来れなかったことを、お詫びしてください。」
「分かった。」
「これを破ると、助けれなくなることを、念頭にお入れください。」
「分かった。
では、珱姫。
本日、しずかのとこに行って来てくれ。」
「分かりました。
お会いしてきます。」
「手土産に、しずかの好きな物を持たせよう。」
「はい。
分かりました。」
「本日は、宮廷に泊まるが良い。
召使いに、準備させよう。」
帝は、すぐに準備してくれた。
朝食を食べた珱姫のとこに、帝が来て、しずかにあげる物を渡してくれた。
「しずかのとこに行く、牛車を準備した。
これに乗って行きなさい。」
「ありがとうございます、帝。」
珱姫は、しずか邸に向かった。
「こんな寂しいとこに、しずか様のお家が…?」
しずか邸があるのは、宮廷の端の方の寂れたとこだった。
牛車が来たことで、しずか邸は、帝が来た!と思って大喜び。
だけど、乗っていたのは珱姫…。
誰もが愕然とした。
「帝からの使いで参りました。
どうか、お面通りを…。」
しずか邸の皆は、愕然としながらも開けてくれた。
しずかにも、珱姫が来た事が伝えられ、しずかは珱姫を迎え入れた。
「その方、珱姫と申しましたよね?
ここには、何故来られたのですか?」
「はい。
帝の命により、こちらへ伺わせていただきました。」
「帝は、何と申されたのです?」
「ずっと行けてない女性のとこに向かって欲しい。と…。
帝からの贈り物も、持って参りました。
どうぞ、お受け取りください。」
「帝から?」
「はい。
幾つかございまして、まずは、こちらから。
こちらは、しずか様の好きな羊羹になります。」
「妾の好きな羊羹…。」
「次に、しずか様のお好きな饅頭。」
「饅頭?
糸屋の?」
「はい。
お次は、翡翠の腕輪になります。」
「翡翠の腕輪?
妾には、小さいと思うんだけど…。」
「しずか様、お手を拝借致します。
桶に湯と石鹸を…。」
召使いは、珱姫の言うとおりにした。
「しずか様。
お手をこの中に、お入れください。
石鹸湯で滑るようにして…。
ほら、入りましたよ。」
「これは凄い。
腕輪を取る時は、同じようにすれば、良いのですか?」
「いいえ。
こちらは、着けると一生そのままです。
翡翠が割れてしまったら、終わりですが…。」
「なるほど。
素敵な贈り物ね。」
「お喜びいただき、帝もさぞ嬉しいかと…。
次は、ガラス細工で作られた、髪飾りです。」
「まぁ、なんて素敵な髪飾り…!」
「しずか様、とてもお似合いです。」
「本当ですか?」
「はい。
お次は、反物になります。」
「反物まで?」
「はい。
しずか様は、紅葉がお好きとの事で、帝がこれをお選びになりました。」
「なんと!
妾の好きな紅葉…。」
「それから、こちらが最後になります。
翡翠で出来た、お猪口になります。
帝とお酒を飲むときにお使いください。」
「まぁ!
綺麗なお猪口!
これで、帝と…?」
「はい。
帝は、来れない日々が続いておりますが、しずか様の事を気にかけておいでです。」
「そうなのですね…。」
「はい。」
「帝が来るまで、今しばらく待ちましょう。
珱姫。
帝にお礼を言っておいてください。」
「かしこまりました。
では、失礼いたします。」
「珱姫。
これから、お茶の時間なのです。
付き合ってはもらえませんか?」
「いいですよ。
わたくしで良ければ…。」
「お茶の支度を。」
しずかは、召使いにそう言った。
すぐに、召使いは、しずかと珱姫のお茶を準備した。
「今日は、帝に頂いた、饅頭でお茶をいただきましょう。
珱姫、遠慮は入りません。
召し上がって。」
「ありがとうございます。」
珱姫は、しずかと何刻も一緒に居た。
「ここは、時を忘れてしまいますね…。
本当、穏やかで…。」
「そうでしょ?
妾の1番好きな場所なのです。」
「多忙の日々を忘れさせてくれますね。」
「そうでしょ?
でも、そろそろ暗くなるわ。
牛車を用意してあげて。」
しずかは、召使いにそう伝えると、牛車が来るのを待った。
牛車が来ると、しずかは外にまで見送りに来てくれた。
珱姫は、その事を感謝しながら帰った。
帝のとこに帰った珱姫。
早速、報告をした。
「しずかが、そのようなことを…。」
「珱姫、しずか殿の顔はどうやった?」
「今のとこは、普通でした。
般若ではなかったです。」
「そうか。
ほな、救えるな。」
「今日の感じですと、救えると思います。」
「般若とは、どう言う事なのだ?」
「僕らは、生き霊を飛ばしてる人が、般若に見えるんです。
でも、しずか殿は般若じゃなかった。
と言うことは、完全に生き霊化してない。と言う事です。
生き霊化してしまっては、救うのが難しく、鬼になれば救う事はできません。」
「そんな…。」
「でも、しずか殿は、まだ、生き霊化していない。
この状態で、救う事が出来れば最高の状態です。
片をつけるには、今が最高の時期になります。
帝。
明日、しずか殿にお会いしてください。」
「分かった。」
「先日申し上げたとおり、こちらの行動を見破られないようにして下さい。」
「分かっておる。」
次の日、帝は生命の言うとおり、しずかのとこに行った。
しずかと、召使い達は、大喜び。
「すぐに、酒の用意を。」
「はい。」
「まだ、朝なのに良いのか?」
「はい。
帝が来てくれたんですから。」
「そうか。」
帝は、しずかと楽しい時を過ごした。
そして、中々来れなかったことを謝った。
しずかは、帝に謝ってもらえると思わず、涙を流した。
この日、帝はしずかのとこで夜を明かした。
次の日、帝は晴明達を呼んだ。
「どうだ?
何か変わったか?」
「はい。
帝が、しずか殿のとこで、夜を明かした時から、首を絞めるものは、居りませんでした。」
「そうか。
しずかは、どうなる?」
「このまま、生き霊にならなければ、大丈夫です。」
「分かった。」
「もし、生き霊になられても、わたくしの式神が、教えてくれるでしょう。」
「そうか。
珱姫。
ありがとう。
晴明も。」
「当然のことをしたまでです。
それでは、僕と珱姫は、帰らせていただきます。」
「分かった。
牛車を用意しよう。」
「ありがとうございます。
ほな、珱姫、帰ろうか。」
「はい。
帝、ありがとうございます。」
「そうだ。
褒美を持って帰られよ。
今回も奮発させてもらった。」
「ありがとうございます。
晴明様、参りましょう。」
「そやな。」
帝からの褒美は、かなりの量で、珱姫は大喜び。
仲の良い晴明と珱姫。
ただ、この時静かに黒い陰りが近付いていた。
帝の使いが、晴明の屋敷に向かっていることを、珱姫の式神が察知した。
「珱姫様。」
「何?
どうしたの?」
「帝の使いがこちらに向かっています。
しかも、牛車が2台…。」
「分かったわ。
ありがとう。」
珱姫は、すぐに晴明に話した。
「牛車が2台…?」
「はい。」
「誰が来るんやろ…。」
「分かりません…。
探りを入れましょうか?」
「そうしてくれる?」
「分かりました。」
珱姫は、早速式神達に命を出し、牛車2台のことを調べ始めた。
「珱姫様。
牛車のことが分かりました。
1台は晴明様。
もう1台は珱姫様の牛車でした。」
「では、わたくし達2人を迎えに来ようとしていると言うこと?」
「はい。」
「そう。
分かったわ。
ありがとう。」
珱姫は、晴明に伝えた。
牛車が晴明の屋敷に着いた時、晴明と珱姫が出迎えた。
「晴明、珱姫。
すぐに帝の元へ参られよ。」
2人は素直に牛車に乗った。
帝の元に着いた時、帝は2人を大歓迎で迎えた。
「晴明、珱姫。
よく来てくれた!」
「帝!
そのお顔は?!」
「晴明。
よくぞ聞いてくれた。
実は…ここ最近、眠ると何者かに首を絞められているのだ。」
晴明も珱姫も驚いた。
「晴明…。
珱姫…。
誰が首を絞めているのか、調べてくれぬか?」
「分かりました。
僕と珱姫で探します。」
「おおっ。
助けてくれるか?
晴明。」
「帝の命とあらば。」
「早速、今日から調べて欲しい。」
「分かりました。
珱姫。
帰って準備して戻ってこよう。」
「はい。
晴明様。」
晴明と珱姫は、一度戻ることにした。
屋敷に着き、牛車から降りると、使いの者が晴明達に二刻後に迎えに来る。と言った。
二刻後、帝の使いが迎えに来た。
2人は牛車に乗って、帝のとこに向かった。
「帝、今回、僕らの考えてる作戦は、帝の依代を布団に置き、帝は珱姫と隠れていてもらいます。
隠れているときは、物音も声も出さぬようにお願いします。」
「皇子にやったのと同じだな。」
「そうです。
ただ、ここからが違います。
帝には、物音や声を出さずに、帝の依代に恨みを発散しているものを、見て欲しいのです。」
「近づけと言うのか?!」
「いいえ。
珱姫の式神を通じて見ていただきます。」
「なるほど。」
「誰が呪っているかは、その者が去った後に教えてください。
絶対に、物音と声を出さぬようにお願いします。」
「分かった。
約束しよう。」
「では、僕らはこれから準備に入ります。
帝は珱姫の指示に従ってください。」
「分かった。
珱姫、どうしたら良いのだ?」
「では、こちらで裸になってください。」
「裸?!」
「はい。
祝詞を直接体に書きますので。
脱いでください。」
「分かった。」
珱姫は、帝の裸に祝詞を書き始めた。
晴明は、結界を張り、依代に術を施した。
丑三つ時。
帝と珱姫は隠れ、晴明は布団の側で祝詞を、唱え始めた。
すると、廊下から、絹の擦れる音がし始め、帝を呪っている者が、帝の部屋に入ってきた。
珱姫は、お酒の式神を出した。
式神は、呪っている者の近くまで行き、顔をお酒に映し、珱姫の元に帰ってきた。
帝を呪っているものは、帝の依代の隣に寝転び、帝の依代に話しかけ始めた。
「帝…。
どうして、妾のとこに来てくれぬのですか?
和子や綾子姫がそんなに良いのですか?
妾の事は忘れてしまわれたのですか?
お答えください。
妾は、帝の元にいても良いのですか?
愛しい帝…。
何故、何も答えてくれないのです?
口を聞くのも嫌なのですか?」
帝を呪う者は、どんどん顔つきが変わってきた。
そして、般若のような顔で、帝の首を絞め始めた。
「何故、来てくれないのです?
何故、何も答えてくれぬのです?
何故、妾のことを無視するのです?
帝が宮廷に呼んだのに…。
酷すぎます…。」
帝を呪う者は、散々、帝を甚振りながらも、愛おしくしたり、情緒不安定なままだった。
「帝…。
明日も来ます。
その時は、愛してください。」
帝を呪う者が帰ろうとした時、珱姫は富士の式神を出し、帝を呪う者に着けた。
帝を呪う者が、帰ってから、帝に帝を呪う者の顔を見せた。
「これは…!!
しずか!!」
「しずか殿…。
僕も長いこと帝に仕えてますが、しずか殿を見たことも、聞いたこともありません。
どなたなのです?」
「わたしがこの都に呼んだ者だ。
綾子姫に子が出来るまでは、よく通っていたのだが、綾子姫に子が出来てから通わなくなり、和子に皇子が出来てからは、綾子姫のとこにも通わなくなったくらいだ。
しずかの事なんて忘れていた。」
「帝、しずか殿は、まだ、救いようがありますが、このままの状態では、救えなくなるようになります。
救うか、救わないか、お決めください。
それによって、僕らも対応を考えます。」
「救えるのか?!」
「まだ、救えます。」
「ならば、救ってくれ!
しずかは、綺麗な子で、わたしのお気に入りなのだ。
ただ、子が出来なかっただけで…。」
「分かりました。
お救い致しましょう。
珱姫。
式神は?」
「抜かり無く、お着けさせて頂いております。」
「ほな、しずか殿の事は、珱姫に任せてええ?」
「はい。
まずは、しずか様にお会いしてきます。
帝の命と称して。」
「分かった。
そうして。
帝、しずか殿に帝自身が、お会いできますか?」
「勿論だ。」
「では、珱姫の報告を聴き次第、お会いしてください。
お会いしても、呪われていること、今日の事などはお話ししませんように。
もし、話してしまうと、助けれなくなるかもしれません。
今まで来れなかったことを、お詫びしてください。」
「分かった。」
「これを破ると、助けれなくなることを、念頭にお入れください。」
「分かった。
では、珱姫。
本日、しずかのとこに行って来てくれ。」
「分かりました。
お会いしてきます。」
「手土産に、しずかの好きな物を持たせよう。」
「はい。
分かりました。」
「本日は、宮廷に泊まるが良い。
召使いに、準備させよう。」
帝は、すぐに準備してくれた。
朝食を食べた珱姫のとこに、帝が来て、しずかにあげる物を渡してくれた。
「しずかのとこに行く、牛車を準備した。
これに乗って行きなさい。」
「ありがとうございます、帝。」
珱姫は、しずか邸に向かった。
「こんな寂しいとこに、しずか様のお家が…?」
しずか邸があるのは、宮廷の端の方の寂れたとこだった。
牛車が来たことで、しずか邸は、帝が来た!と思って大喜び。
だけど、乗っていたのは珱姫…。
誰もが愕然とした。
「帝からの使いで参りました。
どうか、お面通りを…。」
しずか邸の皆は、愕然としながらも開けてくれた。
しずかにも、珱姫が来た事が伝えられ、しずかは珱姫を迎え入れた。
「その方、珱姫と申しましたよね?
ここには、何故来られたのですか?」
「はい。
帝の命により、こちらへ伺わせていただきました。」
「帝は、何と申されたのです?」
「ずっと行けてない女性のとこに向かって欲しい。と…。
帝からの贈り物も、持って参りました。
どうぞ、お受け取りください。」
「帝から?」
「はい。
幾つかございまして、まずは、こちらから。
こちらは、しずか様の好きな羊羹になります。」
「妾の好きな羊羹…。」
「次に、しずか様のお好きな饅頭。」
「饅頭?
糸屋の?」
「はい。
お次は、翡翠の腕輪になります。」
「翡翠の腕輪?
妾には、小さいと思うんだけど…。」
「しずか様、お手を拝借致します。
桶に湯と石鹸を…。」
召使いは、珱姫の言うとおりにした。
「しずか様。
お手をこの中に、お入れください。
石鹸湯で滑るようにして…。
ほら、入りましたよ。」
「これは凄い。
腕輪を取る時は、同じようにすれば、良いのですか?」
「いいえ。
こちらは、着けると一生そのままです。
翡翠が割れてしまったら、終わりですが…。」
「なるほど。
素敵な贈り物ね。」
「お喜びいただき、帝もさぞ嬉しいかと…。
次は、ガラス細工で作られた、髪飾りです。」
「まぁ、なんて素敵な髪飾り…!」
「しずか様、とてもお似合いです。」
「本当ですか?」
「はい。
お次は、反物になります。」
「反物まで?」
「はい。
しずか様は、紅葉がお好きとの事で、帝がこれをお選びになりました。」
「なんと!
妾の好きな紅葉…。」
「それから、こちらが最後になります。
翡翠で出来た、お猪口になります。
帝とお酒を飲むときにお使いください。」
「まぁ!
綺麗なお猪口!
これで、帝と…?」
「はい。
帝は、来れない日々が続いておりますが、しずか様の事を気にかけておいでです。」
「そうなのですね…。」
「はい。」
「帝が来るまで、今しばらく待ちましょう。
珱姫。
帝にお礼を言っておいてください。」
「かしこまりました。
では、失礼いたします。」
「珱姫。
これから、お茶の時間なのです。
付き合ってはもらえませんか?」
「いいですよ。
わたくしで良ければ…。」
「お茶の支度を。」
しずかは、召使いにそう言った。
すぐに、召使いは、しずかと珱姫のお茶を準備した。
「今日は、帝に頂いた、饅頭でお茶をいただきましょう。
珱姫、遠慮は入りません。
召し上がって。」
「ありがとうございます。」
珱姫は、しずかと何刻も一緒に居た。
「ここは、時を忘れてしまいますね…。
本当、穏やかで…。」
「そうでしょ?
妾の1番好きな場所なのです。」
「多忙の日々を忘れさせてくれますね。」
「そうでしょ?
でも、そろそろ暗くなるわ。
牛車を用意してあげて。」
しずかは、召使いにそう伝えると、牛車が来るのを待った。
牛車が来ると、しずかは外にまで見送りに来てくれた。
珱姫は、その事を感謝しながら帰った。
帝のとこに帰った珱姫。
早速、報告をした。
「しずかが、そのようなことを…。」
「珱姫、しずか殿の顔はどうやった?」
「今のとこは、普通でした。
般若ではなかったです。」
「そうか。
ほな、救えるな。」
「今日の感じですと、救えると思います。」
「般若とは、どう言う事なのだ?」
「僕らは、生き霊を飛ばしてる人が、般若に見えるんです。
でも、しずか殿は般若じゃなかった。
と言うことは、完全に生き霊化してない。と言う事です。
生き霊化してしまっては、救うのが難しく、鬼になれば救う事はできません。」
「そんな…。」
「でも、しずか殿は、まだ、生き霊化していない。
この状態で、救う事が出来れば最高の状態です。
片をつけるには、今が最高の時期になります。
帝。
明日、しずか殿にお会いしてください。」
「分かった。」
「先日申し上げたとおり、こちらの行動を見破られないようにして下さい。」
「分かっておる。」
次の日、帝は生命の言うとおり、しずかのとこに行った。
しずかと、召使い達は、大喜び。
「すぐに、酒の用意を。」
「はい。」
「まだ、朝なのに良いのか?」
「はい。
帝が来てくれたんですから。」
「そうか。」
帝は、しずかと楽しい時を過ごした。
そして、中々来れなかったことを謝った。
しずかは、帝に謝ってもらえると思わず、涙を流した。
この日、帝はしずかのとこで夜を明かした。
次の日、帝は晴明達を呼んだ。
「どうだ?
何か変わったか?」
「はい。
帝が、しずか殿のとこで、夜を明かした時から、首を絞めるものは、居りませんでした。」
「そうか。
しずかは、どうなる?」
「このまま、生き霊にならなければ、大丈夫です。」
「分かった。」
「もし、生き霊になられても、わたくしの式神が、教えてくれるでしょう。」
「そうか。
珱姫。
ありがとう。
晴明も。」
「当然のことをしたまでです。
それでは、僕と珱姫は、帰らせていただきます。」
「分かった。
牛車を用意しよう。」
「ありがとうございます。
ほな、珱姫、帰ろうか。」
「はい。
帝、ありがとうございます。」
「そうだ。
褒美を持って帰られよ。
今回も奮発させてもらった。」
「ありがとうございます。
晴明様、参りましょう。」
「そやな。」
帝からの褒美は、かなりの量で、珱姫は大喜び。
仲の良い晴明と珱姫。
ただ、この時静かに黒い陰りが近付いていた。



