帝から、沢山の褒美をもらった、晴明と珱姫。
珱姫は、特にお米を、俵でもらえたことに、喜んでいた。
「珱姫、とても嬉しそうやな?」
「はいっ!!
お米を俵で頂けたんですもの。
これは、嬉しい限りにございます。」
「喜んでもらえて、帝も喜ばれるやろ。」
「そうでしょうか?」
「そやと思うで。
で、今日の夕飯はなんや?」
「これから、おかずになる魚を買って参ります。
少々、お待ちください。」
「分かった。」
珱姫は、魚を買いに出た。
「今日は、桜とお酒にしましょ。」
珱姫は、式神を出し、護衛させた。
「いらっしゃい!
いらっしゃい!!
今日はいい魚が入ってるよ!!
奥さん、どうです?」
魚屋さんが声出ししていた。
「こんにちは。」
「珱姫様!」
「今日の1番いい魚はどれ?」
「これですよ!
見て下さい!
この鮭!!
脂も乗って、この大きさの鮭!!
どうですか?」
「じゃあ、それもらうわ。」
「ありがとうございます!!」
珱姫は、大きな鮭を買って帰った。
「これだけあれば、明日のおかずも足りるわ。
いい買い物しちゃった。」
鮭を持って帰り、捌く前に、晴明に見せた。
「ほう!
立派な鮭やん。」
「これを今日は、塩焼きにします。」
「わぁ!
楽しみやな。」
珱姫は、すぐに台所に行き、料理を始めた。
料理ができる頃、珱姫の式神が、博雅の来訪を伝えに来た。
珱姫は、声明に伝えるよう、式神に言った。
すぐに式神は晴明に伝えた。
料理ができる頃、博雅が来た。
「博雅様。
ようこそ。」
「今日は、珱姫が案内してくれるのか?」
「いいえ。
珱姫様は、お食事の用意をされてます。
私は、式神の桜です。」
そう言うと、式神は元の姿に戻った。
「また、やられた!
まったく、式神というのは…。」
式神の悪口を言いながら、晴明のとこに通された、博雅。
「博雅。
どうしたんや?
何に怒ってるん?」
「怒っているのではない。
式神にいっぱい食わされたとこだ。」
「ははは。
珱姫の式神か。」
「そうだ。
お前達は、すぐに式神を作る。」
「僕ら陰陽師やし。」
「そうだが…。」
「それに、この屋敷は広い。
式神使わんと、やってられへん。」
「なるほどな。」
「で、今日はどうしたんや?」
「晴明。
聞いてくれ!」
「何や?」
「私は、恋に落ちた。」
「は?」
「だから、恋に落ちたのだ!
慕っている人が居る!と言うことだ。」
「博雅に?」
「そうだ。」
「どこの誰や?」
「どこに住んでるのかは分からん。」
「何やそれ。」
「私の笛の音を聴きに来てくれるのだ。」
「へぇ…。
どんな人や?」
「それも分からん。」
「何やて?
何で分からへんの?」
「いつも籠に乗って来てくれ、顔を出してはくれぬのだ。」
「それを好きになったと…?」
「そうだ。」
「顔も分からん、住んでるとこも分からん…。
それで好きになったと…?
拐かされてるんやないやろな?」
「それを調べてもらいたいのだ。」
「そう言うこと?」
「そうだ。
晴明、頼む!
私の最後の恋かも知れぬのだ!」
「うーん…。
まぁ、ええよ。
いつ行ったら会える?」
「あと一刻したら来る。」
「分かった。
行ってみよう。」
「おう!
頼んだ!」
そこに珱姫が来た。
「晴明様。
お出かけですか?」
「そうや。
少しやから、先に食べてて。」
「分かりました…。
お気を付けて。」
「ん。
博雅、行こうか。」
「ああ。
珱姫、晴明を借りる。」
「僕、物やないで。」
「まぁまぁ。」
「行ってらっしゃいませ。」
珱姫は2人を見送り、1人で晩ご飯を食べた。
博雅達は、博雅の思い人を待った。
一刻後。
博雅は自宅の門の前で、笛を吹き始めた。
すると、籠が現れた。
「今日も来てくださったのですね。」
「博雅様の笛の音は、心地良いですから…。」
「今宵も月が綺麗ですね。」
「ええ…。」
「今宵こそは、お顔を見せてはくれませんか?」
籠の君は、何も言わず去っていった。
晴明は式神に後を追うように言い、式神は籠について行った。
でも、晴明の式神は、珱姫の式神と違い、醜いのですぐに見つかってしまい、消さざるをえなかった。
「珱姫。
僕の式神見つかってしまった…。」
「お2人で何をされているのですか?」
「私の思い人を探してもらっているのいるのだ。」
「探知の低い晴明様の式神でですか?」
「そうやった!
僕、探知苦手やねん。」
「せ…晴明…っっ!」
「大丈夫やって。
珱姫は得意やから。
珱姫、頼んだで。」
「分かりました。
では、明日の夜はわたくしが参ります。」
「おおっ!
珱姫、頼んだぞ!」
「はい。
炎。
晴明様にお食事を。
博雅様におツマミとお酒を。」
式神は珱姫の命令通りに、晴明に食事、博雅に酒とツマミを持って来た。
珱姫は博雅にお酌した。
「博雅様の思い人、どんな方なんでしょうね。」
「僕も気になってん。」
「私も気になっておる。」
「でも、お顔も見ずにお好きになるとは、博雅様らしいですね。」
「そうか?」
「はい。
外見では無く、中身をお好きになるとこが、博雅様らしいです。」
「確かにそうやな。」
晴明と珱姫は笑った。
「笑う事はないだろう。」
「いやいや。
博雅らしくてええな。と思ったんや。」
「そうですよ。」
この日は、博雅の恋を祝って、3人でお酒を飲んで眠った。
次の日。
珱姫は朝ご飯を作り、晴明と昨日泊まった博雅を起こした。
2人は、起きてすぐに朝ご飯を食べた。
珱姫は、2人が食べた後、1人で食べ、片付けた。
この日の夜。
晴明と珱姫は、2人で博雅の家に行った。
いつもの時間に、いつもの場所で、笛を吹き始めた。
すると、いつものように、籠が現れた。
「今日も来てくださったのですね。」
「はい…。
博雅様の笛の音に引き寄せられました。」
博雅は、しばらく笛を吹いた。
「今宵もいい音色ですこと…。」
「ありがとうございます。
今日こそは、名前を教えていただけませぬか?」
籠の君は、なにも言わず帰ってしまい、珱姫の式神が籠を追った。
そして、判明したのは、この世に300年以上生きている妖狐だった。
「博雅様…。
今回は、お諦めください。」
「どう言う意味だ?
私は諦めんぞ?
妖だったのか?
妖でもいい、
私が好きになったのだ。
教えてくれ。」
「晴明様…。」
「珱姫。
教えてあげなさい。」
「分かりました…。
博雅様の思い人は、300年以上生きている妖狐です。
名前は皐月。
あの近くの右大臣の屋敷で、下働きして、生計を立てています。
更に、夜には、姿が妖狐になる為、あの茂みに逃げて朝を待ってるようです。」
「して、私のとこに来た理由は?」
「本当に、笛の音に引き寄せられた。と…。」
「そうか。
明日も来てくれるのか?」
「驚かれています。
正体がバレても気にしないのか?と…。」
「正体なら気にしない。
妖狐がなんだ。
こっちは毎日、妖や式神に会っているのだ。
妖狐なんて平気だ。」
「お伝えしたとこ、明日、お姿を現せてくれるそうです。」
「本当か?!」
「はい。」
「ありがとう!と伝えてくれ。」
「分かりました。」
次の日の夜。
博雅は、いつもの時間に、いつのもの場所で笛を吹き始めた。
すると、人の姿をした皐月が現れた。
「想像通りお美しい。」
「美しいですか?」
「はい。
今宵は、籠ではないのですね。」
「はい…。」
「籠を運んでる人たちも妖狐なのですか?」
「そうです。」
「そうですか。
私の名前は博雅です。」
「博雅様。
わたしは妖狐です。
本当にいいのですか?」
「はい。
妖狐であろうが、貴女に私は惹かれたのです。」
「………。」
「皐月殿。
私と恋仲になっていただけないだろうか?」
「博雅様、わたしは妖狐ですよ?」
「構いません。
私は貴女に恋したのです。
貴女と添い遂げたい。」
「わたしでいいのですか?」
「貴女がいいのです。」
「…分かりました。
では、妖狐の姿もお見せしましょう。」
皐月は妖狐の姿を見ると諦めると思っていた。
「これが、妖狐の姿です。」
「妖狐になられてもお美しい。」
「このわたしでいいのですか?」
「はい!」
「分かりました。
恋仲になりましょう。」
「ありがとう。
皐月殿。」
「ですが、人の姿になれるのは、この時間くらいまでになります。
時間を超えると、妖狐の姿になりますので、お気を付け下さい。」
「分かりました。」
「では、今宵はこれで帰ります。」
「分かりました。」
「昼は、右大臣の屋敷で働いておりますので、お会い出来ないでしょう。
明日も、この時間に…。」
「分かりました。」
皐月は、それだけ言うと闇夜にに消えていった。
次の日。
博雅は、晴明と珱姫に報告しに、晴明の屋敷に向かった。
途中で魚屋に寄り、立派な鮎を3匹とアサリを20個と蛤を10個とシシャモを15匹買った。
「これだけあれば、たらふく食えるだろう。」
博雅はルンルンで晴明の屋敷に行った。
屋敷に着くと、いつものように、珱姫の式神に案内され、晴明とご対面。
「晴明。
私はいい気分なのだ。」
「どうしたんや?」
「昨日、私は皐月殿に会い、告白したのだ。」
「ほう…。
それで?」
「見事、恋仲になった。
今日は、その祝いだ。
珱姫も呼んで、一緒に飲もう。」
「ホンマに?!」
「本当だ。
ただ、夜にしか会えないけどな。」
「それは、右大臣の屋敷で働いてるからやろ?」
「そう!
それでも、私は構わん。」
「そうか…。」
「だから、祝いだ。
珱姫も呼ぼう。」
「そやな。
桜、珱姫を呼んでくれへん?」
桜は頷き、珱姫を呼びに行った。
珱姫は、すぐに来た。
「どうされたんですか?」
「今日は、祝いやから頂きなさい。」
「分かりました…。
ところで、何のお祝いですか?」
「博雅の恋が実った祝いや。」
「実った?!
皐月がOK出したんですか?!」
「そうや。
驚きやろ?」
「はい…。」
「そんなに驚くことなのか?」
「当たり前や。」
「皐月は、人と関わるのが嫌いなんです。」
「そうなのか?」
「そうですよ。
右大臣の屋敷で働いてるのも、生きていくのに仕方なしですから。
人と付き合うなんて、あり得ません。」
「でも、私は恋が実ったのだ。」
そこに、皐月が人の姿で現れた。
「晴明様、珱姫様。
お久しぶりにございます。」
「皐月殿。」
「皐月。」
「皐月殿。
どうしてここに?」
「博雅様。
このお2人は、わたしの恩人なのです。
昔、妖狩りが行われ、わたし達は、逃げ回っておりました。
あと少しで捕まるとこに、お2人の先祖が助けてくれたのです。」
「妖狩り…?」
「はい。
当時の帝は、妖を恐れ、妖を全て排除すべき!とのお考えでした。」
「なんと!
そのような時代が…。」
「はい…。
帝の妖に対する怖がり方は、憎しみにも憎悪にも取れました。」
「そうだったのか…。」
「はい…。
ですから、人と関わるのが怖かったのです。」
「何故、私だけ…?」
「笛の音が、あまりにも美しく、優しかったものですから…。
どうしても聴きたくて…。」
「そうだったのですか…。
私の笛の音色は、そんなに良かったですか?」
「はい。」
「それは、嬉しい。」
「ふふふ…。」
「皐月殿は、笑い方もお美しい…。」
「ありがとうございます。」
皐月は照れた。
「皐月。
博雅様は、とても良い方(かた)です。
良かったですね。」
「珱姫様…。
はい。」
「良かった。
僕も心配してたんやで?」
「晴明様…。
ありがとうございます。
わたしは、そろそろ帰ります。
妖狐の姿になりますので…。」
「そうね。」
「せやったな。」
「分かった。
また、明日。」
「はい。
失礼します。」
皐月は闇夜に消えた。
珱姫は、特にお米を、俵でもらえたことに、喜んでいた。
「珱姫、とても嬉しそうやな?」
「はいっ!!
お米を俵で頂けたんですもの。
これは、嬉しい限りにございます。」
「喜んでもらえて、帝も喜ばれるやろ。」
「そうでしょうか?」
「そやと思うで。
で、今日の夕飯はなんや?」
「これから、おかずになる魚を買って参ります。
少々、お待ちください。」
「分かった。」
珱姫は、魚を買いに出た。
「今日は、桜とお酒にしましょ。」
珱姫は、式神を出し、護衛させた。
「いらっしゃい!
いらっしゃい!!
今日はいい魚が入ってるよ!!
奥さん、どうです?」
魚屋さんが声出ししていた。
「こんにちは。」
「珱姫様!」
「今日の1番いい魚はどれ?」
「これですよ!
見て下さい!
この鮭!!
脂も乗って、この大きさの鮭!!
どうですか?」
「じゃあ、それもらうわ。」
「ありがとうございます!!」
珱姫は、大きな鮭を買って帰った。
「これだけあれば、明日のおかずも足りるわ。
いい買い物しちゃった。」
鮭を持って帰り、捌く前に、晴明に見せた。
「ほう!
立派な鮭やん。」
「これを今日は、塩焼きにします。」
「わぁ!
楽しみやな。」
珱姫は、すぐに台所に行き、料理を始めた。
料理ができる頃、珱姫の式神が、博雅の来訪を伝えに来た。
珱姫は、声明に伝えるよう、式神に言った。
すぐに式神は晴明に伝えた。
料理ができる頃、博雅が来た。
「博雅様。
ようこそ。」
「今日は、珱姫が案内してくれるのか?」
「いいえ。
珱姫様は、お食事の用意をされてます。
私は、式神の桜です。」
そう言うと、式神は元の姿に戻った。
「また、やられた!
まったく、式神というのは…。」
式神の悪口を言いながら、晴明のとこに通された、博雅。
「博雅。
どうしたんや?
何に怒ってるん?」
「怒っているのではない。
式神にいっぱい食わされたとこだ。」
「ははは。
珱姫の式神か。」
「そうだ。
お前達は、すぐに式神を作る。」
「僕ら陰陽師やし。」
「そうだが…。」
「それに、この屋敷は広い。
式神使わんと、やってられへん。」
「なるほどな。」
「で、今日はどうしたんや?」
「晴明。
聞いてくれ!」
「何や?」
「私は、恋に落ちた。」
「は?」
「だから、恋に落ちたのだ!
慕っている人が居る!と言うことだ。」
「博雅に?」
「そうだ。」
「どこの誰や?」
「どこに住んでるのかは分からん。」
「何やそれ。」
「私の笛の音を聴きに来てくれるのだ。」
「へぇ…。
どんな人や?」
「それも分からん。」
「何やて?
何で分からへんの?」
「いつも籠に乗って来てくれ、顔を出してはくれぬのだ。」
「それを好きになったと…?」
「そうだ。」
「顔も分からん、住んでるとこも分からん…。
それで好きになったと…?
拐かされてるんやないやろな?」
「それを調べてもらいたいのだ。」
「そう言うこと?」
「そうだ。
晴明、頼む!
私の最後の恋かも知れぬのだ!」
「うーん…。
まぁ、ええよ。
いつ行ったら会える?」
「あと一刻したら来る。」
「分かった。
行ってみよう。」
「おう!
頼んだ!」
そこに珱姫が来た。
「晴明様。
お出かけですか?」
「そうや。
少しやから、先に食べてて。」
「分かりました…。
お気を付けて。」
「ん。
博雅、行こうか。」
「ああ。
珱姫、晴明を借りる。」
「僕、物やないで。」
「まぁまぁ。」
「行ってらっしゃいませ。」
珱姫は2人を見送り、1人で晩ご飯を食べた。
博雅達は、博雅の思い人を待った。
一刻後。
博雅は自宅の門の前で、笛を吹き始めた。
すると、籠が現れた。
「今日も来てくださったのですね。」
「博雅様の笛の音は、心地良いですから…。」
「今宵も月が綺麗ですね。」
「ええ…。」
「今宵こそは、お顔を見せてはくれませんか?」
籠の君は、何も言わず去っていった。
晴明は式神に後を追うように言い、式神は籠について行った。
でも、晴明の式神は、珱姫の式神と違い、醜いのですぐに見つかってしまい、消さざるをえなかった。
「珱姫。
僕の式神見つかってしまった…。」
「お2人で何をされているのですか?」
「私の思い人を探してもらっているのいるのだ。」
「探知の低い晴明様の式神でですか?」
「そうやった!
僕、探知苦手やねん。」
「せ…晴明…っっ!」
「大丈夫やって。
珱姫は得意やから。
珱姫、頼んだで。」
「分かりました。
では、明日の夜はわたくしが参ります。」
「おおっ!
珱姫、頼んだぞ!」
「はい。
炎。
晴明様にお食事を。
博雅様におツマミとお酒を。」
式神は珱姫の命令通りに、晴明に食事、博雅に酒とツマミを持って来た。
珱姫は博雅にお酌した。
「博雅様の思い人、どんな方なんでしょうね。」
「僕も気になってん。」
「私も気になっておる。」
「でも、お顔も見ずにお好きになるとは、博雅様らしいですね。」
「そうか?」
「はい。
外見では無く、中身をお好きになるとこが、博雅様らしいです。」
「確かにそうやな。」
晴明と珱姫は笑った。
「笑う事はないだろう。」
「いやいや。
博雅らしくてええな。と思ったんや。」
「そうですよ。」
この日は、博雅の恋を祝って、3人でお酒を飲んで眠った。
次の日。
珱姫は朝ご飯を作り、晴明と昨日泊まった博雅を起こした。
2人は、起きてすぐに朝ご飯を食べた。
珱姫は、2人が食べた後、1人で食べ、片付けた。
この日の夜。
晴明と珱姫は、2人で博雅の家に行った。
いつもの時間に、いつもの場所で、笛を吹き始めた。
すると、いつものように、籠が現れた。
「今日も来てくださったのですね。」
「はい…。
博雅様の笛の音に引き寄せられました。」
博雅は、しばらく笛を吹いた。
「今宵もいい音色ですこと…。」
「ありがとうございます。
今日こそは、名前を教えていただけませぬか?」
籠の君は、なにも言わず帰ってしまい、珱姫の式神が籠を追った。
そして、判明したのは、この世に300年以上生きている妖狐だった。
「博雅様…。
今回は、お諦めください。」
「どう言う意味だ?
私は諦めんぞ?
妖だったのか?
妖でもいい、
私が好きになったのだ。
教えてくれ。」
「晴明様…。」
「珱姫。
教えてあげなさい。」
「分かりました…。
博雅様の思い人は、300年以上生きている妖狐です。
名前は皐月。
あの近くの右大臣の屋敷で、下働きして、生計を立てています。
更に、夜には、姿が妖狐になる為、あの茂みに逃げて朝を待ってるようです。」
「して、私のとこに来た理由は?」
「本当に、笛の音に引き寄せられた。と…。」
「そうか。
明日も来てくれるのか?」
「驚かれています。
正体がバレても気にしないのか?と…。」
「正体なら気にしない。
妖狐がなんだ。
こっちは毎日、妖や式神に会っているのだ。
妖狐なんて平気だ。」
「お伝えしたとこ、明日、お姿を現せてくれるそうです。」
「本当か?!」
「はい。」
「ありがとう!と伝えてくれ。」
「分かりました。」
次の日の夜。
博雅は、いつもの時間に、いつのもの場所で笛を吹き始めた。
すると、人の姿をした皐月が現れた。
「想像通りお美しい。」
「美しいですか?」
「はい。
今宵は、籠ではないのですね。」
「はい…。」
「籠を運んでる人たちも妖狐なのですか?」
「そうです。」
「そうですか。
私の名前は博雅です。」
「博雅様。
わたしは妖狐です。
本当にいいのですか?」
「はい。
妖狐であろうが、貴女に私は惹かれたのです。」
「………。」
「皐月殿。
私と恋仲になっていただけないだろうか?」
「博雅様、わたしは妖狐ですよ?」
「構いません。
私は貴女に恋したのです。
貴女と添い遂げたい。」
「わたしでいいのですか?」
「貴女がいいのです。」
「…分かりました。
では、妖狐の姿もお見せしましょう。」
皐月は妖狐の姿を見ると諦めると思っていた。
「これが、妖狐の姿です。」
「妖狐になられてもお美しい。」
「このわたしでいいのですか?」
「はい!」
「分かりました。
恋仲になりましょう。」
「ありがとう。
皐月殿。」
「ですが、人の姿になれるのは、この時間くらいまでになります。
時間を超えると、妖狐の姿になりますので、お気を付け下さい。」
「分かりました。」
「では、今宵はこれで帰ります。」
「分かりました。」
「昼は、右大臣の屋敷で働いておりますので、お会い出来ないでしょう。
明日も、この時間に…。」
「分かりました。」
皐月は、それだけ言うと闇夜にに消えていった。
次の日。
博雅は、晴明と珱姫に報告しに、晴明の屋敷に向かった。
途中で魚屋に寄り、立派な鮎を3匹とアサリを20個と蛤を10個とシシャモを15匹買った。
「これだけあれば、たらふく食えるだろう。」
博雅はルンルンで晴明の屋敷に行った。
屋敷に着くと、いつものように、珱姫の式神に案内され、晴明とご対面。
「晴明。
私はいい気分なのだ。」
「どうしたんや?」
「昨日、私は皐月殿に会い、告白したのだ。」
「ほう…。
それで?」
「見事、恋仲になった。
今日は、その祝いだ。
珱姫も呼んで、一緒に飲もう。」
「ホンマに?!」
「本当だ。
ただ、夜にしか会えないけどな。」
「それは、右大臣の屋敷で働いてるからやろ?」
「そう!
それでも、私は構わん。」
「そうか…。」
「だから、祝いだ。
珱姫も呼ぼう。」
「そやな。
桜、珱姫を呼んでくれへん?」
桜は頷き、珱姫を呼びに行った。
珱姫は、すぐに来た。
「どうされたんですか?」
「今日は、祝いやから頂きなさい。」
「分かりました…。
ところで、何のお祝いですか?」
「博雅の恋が実った祝いや。」
「実った?!
皐月がOK出したんですか?!」
「そうや。
驚きやろ?」
「はい…。」
「そんなに驚くことなのか?」
「当たり前や。」
「皐月は、人と関わるのが嫌いなんです。」
「そうなのか?」
「そうですよ。
右大臣の屋敷で働いてるのも、生きていくのに仕方なしですから。
人と付き合うなんて、あり得ません。」
「でも、私は恋が実ったのだ。」
そこに、皐月が人の姿で現れた。
「晴明様、珱姫様。
お久しぶりにございます。」
「皐月殿。」
「皐月。」
「皐月殿。
どうしてここに?」
「博雅様。
このお2人は、わたしの恩人なのです。
昔、妖狩りが行われ、わたし達は、逃げ回っておりました。
あと少しで捕まるとこに、お2人の先祖が助けてくれたのです。」
「妖狩り…?」
「はい。
当時の帝は、妖を恐れ、妖を全て排除すべき!とのお考えでした。」
「なんと!
そのような時代が…。」
「はい…。
帝の妖に対する怖がり方は、憎しみにも憎悪にも取れました。」
「そうだったのか…。」
「はい…。
ですから、人と関わるのが怖かったのです。」
「何故、私だけ…?」
「笛の音が、あまりにも美しく、優しかったものですから…。
どうしても聴きたくて…。」
「そうだったのですか…。
私の笛の音色は、そんなに良かったですか?」
「はい。」
「それは、嬉しい。」
「ふふふ…。」
「皐月殿は、笑い方もお美しい…。」
「ありがとうございます。」
皐月は照れた。
「皐月。
博雅様は、とても良い方(かた)です。
良かったですね。」
「珱姫様…。
はい。」
「良かった。
僕も心配してたんやで?」
「晴明様…。
ありがとうございます。
わたしは、そろそろ帰ります。
妖狐の姿になりますので…。」
「そうね。」
「せやったな。」
「分かった。
また、明日。」
「はい。
失礼します。」
皐月は闇夜に消えた。



