あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される

 すると、煉魁はハッとしたように琴禰を見て、愛おしそうに目を細めた。

「笑った顔は、なおさら可愛いな」

「なっ!」

 顔を真っ赤にして照れる琴禰に、煉魁はさらに甘い言葉を投げる。

「照れた顔も可愛い」

「お(たわむ)れを……」

 煉魁の謎めいた深い眼差しを避けるように、琴禰は目を泳がせた。

「戯れなどではない。お世辞でもない。俺は本心しか言わない」

 あわあわと唇がわなないて閉まらない。

 どうしてこんなことを言われるのか分からなかった。

 驚き戸惑っていると、煉魁は琴禰の髪をひと房手に取り、愛でるように匂いを嗅いだ。

「寝ている顔も、いつまでも見ていて飽きなかったが、起きている琴禰といられるのは一層楽しい」

 煉魁の笑みは、目を奪われるほどの美しさだった。

(な、な、な、何、この甘い色気の破壊力は!)

 琴禰の鼓動は、はち切れんばかりに大きく鳴っていた。

 生まれてこのかた、こんなことを言われたことがない。それなのに、初めて言われた男性が、見たこともないくらい見目麗しく色気のある男前だ。