あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される

 
モヤモヤが残ったが、そう言われてしまっては踏み込むことができない。代わりに別の問いを聞いてみることにした。

「あやかしの人達は、煉魁様やあなたのように、人間とまったく変わらない姿をしている人もいれば、少し変わった容姿をしている人もいるのはどうしてなのかしら?」

「厳密にいえば、あやかしは人ではないです。それに、人間とまったく変わらない姿をしているのは、あやかし王と大王だけですよ」

「でも……」

 すると、扶久は水平に切られた前髪を上げた。

 露わになった額には、三つ目の瞳があった。

「完全なる人間の姿をしているのは、力が強く選ばれた者である証拠です。人間の姿に近しければ近しいほど美しいと思われています。とはいえ、人間に憧れがあるのかといえばそうでもありませんが」

 扶久はわりと忌憚のない物言いをする。けれど、あやかしのことを何も知らない琴禰にとっては、その方が分かりやすかった。

「それでは、わたくしは一旦下がらせていただきます。あやかし王がいらっしゃったようなので」