あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される

さして感情のない平坦な声色だった。

(そういえば、侍女に着替えさせたと言っていたわ)

「では、あなたが眠っている間に私の世話を?」

「はい。寝やすいように浴衣を着せ、汚れていたので体や髪を拭かせていただきました」

「それは、大変だったでしょうね。申し訳ありません」

 琴禰が深々と頭を下げると、扶久は戸惑うように眉をひそめた。

「いいえ、仕事ですから。それより、だいぶお眠りになっていたので、お腹は空きませんか? それとも先に湯殿でさっぱりされますか?」

「えっと、私はどれくらい寝ていたのでしょうか?」

「丸二日、昏々とお眠りになっておりました。その間、あやかし王が片時も離れず側においでだったのですが、さすがに公務に呼ばれ文句たらたらで出て行かれました」

「そう……だったのですね」

 二日も眠っていたのはびっくりだが、煉魁がずっと側にいてくれたのも驚きだった。

 そして、文句たらたらで公務に行った姿を想像すると、思わず笑みが零れる。

 その間、扶久はじっと琴禰を見つめていた。