あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される

再び目覚めると、今度は部屋に一人だった。

(煉魁様はどこかしら)

 どれくらい眠りに着いていたのかはわからないが、体は大分楽になっていた。

 自分の力で起き上がり、立ち上がることもできた。

 動くことができる程度に回復はしたが、まだ祓魔の力は使えない。よほど出し尽くしてしまったようだ。

 とりあえず部屋の外に出てみようと、襖に手をかけると、静電気のような指先にピリリとした刺激を感じた。

(結界?)

 驚いて開けようとしていた手が止まると、外から勢いよく襖が開いた。

「お目覚めですね。何なりとご用事を仰せ付けください」

 おかっぱの日本人形のように整った顔立ちの少女が現れた。

 ニコリとも笑わず、生真面目な表情だったので、丁寧な口調だったにも関わらず物怖じしてしまった。

「あ、あの、あなたは?」

「申し遅れました。わたくしは扶久と申します。あやかし王からあなた様の侍女になるように命を受けていますので、以後宜しくお願い致します」