意識を手放そうとしていた琴禰は、ない力を振り絞って瞼を開けた。

するとそこには、人間の足が見えた。声のかんじからして男性だろう。

 顔を上げたいけれど、目を開くので精一杯だった。

すると、その男性は琴禰をひょいと横抱きに持ち上げた。

 男の顔を見ると、息を飲むほど美麗な面立ちをしていた。

まるで月の雫のように滑らかな銀髪が腰まで豊かに流れている。

 ただ立っているだけで威厳があり、醸し出す色気には品がある。

精悍な眼差しに見つめられると、なぜか胸が高揚してきた。

 歳は二十代前半くらいだろうか。若いように見えるが、落ち着いた雄々しい雰囲気を放っているので、もっと年齢は上なのかもしれない。

(こんなに綺麗な人、初めて見た)

 澄八も整った顔立ちをしていたが、彼はその比ではない。人間を超越した美しさを放っていた。