私はぎゅっと胸を押さえる。
佐藤くんのことだから、きっと温室の時のようにロマンチックな告白だってできたはずだ。
下手したら失恋の弱みにつけこんでいるとも捉えられかねない告白は、本人もしたくなかったはず。
それでもあのとき、わたしのために勇気を出して告白してくれた。
わたしのためだけにわたしのことが好きだと言ってくれた。
自分勝手な『好き』じゃない。ほんとうの『好き』。
「わたしは、佐藤くんのことが『好き』だから――ごめんなさい」
言葉にするとすとんと胸に落ちる。あんなに意地をはって、認めたくなかったのに。
でも伝える相手がちがう。わたしが伝えるべき相手は目の前の人ではない。
藤井くんは愕然とした表情でわたしに震える手を伸ばす。
その手をすり抜けて、わたしはかばんを持って身を翻した。
「ごめん。あと、悪いんだけど呼び捨てしないでほしい。……部活、頑張って」
なんの慰めにもならないひと言を付け足してから後悔する。
(これは、過去のわたしの行動が生んだことだ。人のこころはこんなにも難しい)


