シュガーコート



「千花はもう覚えてないかもしれないけど。オレが試合でミスってひとりで居残り練習してたとき、声かけてくれたよな。『努力は人を裏切らない』って。『お互いがんばろう』って。オレはあのときからずっと……千花のことが好きだ」

 好き。

 その単語が出てきてわたしの頭は一瞬でまっ白になった。

 いつだったか、恐らく去年の夏ごろのこと。体育館でひとり黙々とシュート練習をしているバスケ部の一年生に声をかけたような気がする。

 けれどわたしにとってはそんなことは日常のささいな出来事で、相手が誰だったかも、話した内容も全然覚えていない。

(じゃああのときの男子が藤井くんで、それからずっと、わたしのことを――?)

 だんだん自分の呼吸が浅くなっていく。

 いつ、どこで、どんなふうに見られていたのか。教室、部活、公園。もしかしたらそれ以外でも。

 想像すると嫌な心臓の音が止まらない。