見ると藤井くんがわたしの対面に立ったまま、両手をそれぞれわたしの机の端に置いていた。
(え……?)
目線だけ上げると、視界には藤井くんの制服しか入らない状態だ。
突然詰められた距離に顔を上げられない。
「なァ千花」
ぞわり、頭の上から再び呼ばれた名前に背筋が凍りつく。
思わず止まった手からスルリとペンが引き抜かれ、わたしは目線を日誌に落としたまま戦慄した。
頭の先から首すじにかけて、なぞるように視線が突き刺さる。
藤井くんはわたしのつむじに向かって話を続けた。
(どうしよう、顔を)
「最近の千花は変わったよな」
(上げられない……!!)
「雰囲気がずいぶん柔らかくなった」
藤井くんはそう言って机に手をついたまま、わたしのペンを指で器用に回し始める。


