〇姫百合学園体育館(夕方)
 体育館内には全校生徒が集っている。あちこちで立ち話が聞こえて来る。

女子生徒A「キングが何か発表するらしいよ」
女子生徒B「なんだろなんだろ。私が選抜入りするとか?」
女子生徒A「ないない」
女子生徒B「えーー。ワンチャンあると思ってよ! 私だって選抜入りしたいし!」
女子生徒A「でも選抜入りしたら高ランクの子からいじめられるんでしょ? なら嫌」
女子生徒B「うっ……確かにそれはやだなあ。でも選抜入りしたら学費免除とか色々オプションあるし……」

 女子生徒AとBの近くでは女子生徒CとDもひそひそ立ち話をしている。

女子生徒C「なんか噂だとプリンセスが誰か決まったらしいよ」
女子生徒D「マ? もしかして堂上さん辺り? あの人のランクイ級でしょ?」
女子生徒C「どうも堂上さんじゃないみたいよ。しかも今日来たばっかの転校生だって」
女子生徒D「えっうっそ! 絶対堂上さんだと思ってたわーー。てかそれぽっと出の子じゃん。もしかしてキングの知り合い?」
女子生徒C「わっかんない。なんか海外から来た子らしいよ」

 体育館のステージの壇上に雄介が舞台袖から向かう。

雄介「皆さん静粛に! キングの登場です!」

 雄介、手をパンパンと叩く。怜王、綾乃を伴い舞台袖からゆっくり歩いて現れる。

綾乃M「大丈夫かな……緊張する」
怜王「大丈夫だ。俺がいる」
綾乃「……キング」

 怜王、綾乃の左手を恋人繋ぎする。舞台下からは生徒らによる歓声が一気に巻き起こる。

生徒達「キングーー!!!!!」
雄介「皆さん! 今日はプリンセスが決まった事を紹介するために集まって頂きました! これよりキングのお言葉がございます!」
怜王「……という訳で今日は皆にプリンセスが決まった事をお伝えするためにここに集まって貰った。俺のプリンセスはこの村井綾乃さんだ。皆、仲良くしてやってくれ。いじめとかそういうのはしないように。皆仲良くね?」

 怜王、生徒達に微笑む。

生徒達「キングーー!!!!」
怜王「ははっ皆盛り上がってるね。綾乃、挨拶しな」
綾乃「は、はい!」
雄介「皆! プリンセスからの挨拶である!」

 綾乃、怜王に促されステージの真ん中に震える足でゆっくりと近づく。

綾乃「皆さん初めまして。村井綾乃です……。アメリカから来ました。精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」

 綾乃、生徒達に向けてお辞儀をする。生徒達からはざわざわと声が湧く。

雄介「皆さん静粛に! 静粛に! 選抜入りの方、こちらへ来てください」

 雄介の誘導によりカレンら選抜入りの女子生徒が綾乃の目の前に現れ、ずらっと並ぶ。綾乃、その様子に圧倒される。

綾乃M「こ、この人達が選抜入りの人達……! 皆美人で金持ちって感じ……!」
綾乃「……!」
雄介「プリンセス。こちらが選抜入りの女子生徒になります。ではイ級の堂上様よりプリンセスへご挨拶をお願いします」

 カレン、雄介に促されて綾乃の目の前に歩み寄る。綾乃、カレンに圧倒され額から汗を流す。

綾乃「あ、えっと……」
カレン「村井綾乃さんでしょう? 堂上カレンと申します。よろしくお願いしますね」

 カレン、にこりと笑う。綾乃、硬い笑みを浮かべる。

綾乃「よ、よろしくお願いします……」

 綾乃、カレンへ握手をしようと右手を差し出す。

カレン「それには及びませんわ」

 カレン、綾乃の右手をパン! と振り払う。

選抜入りした生徒達「!」

 雄介と怜王及び選抜入りした生徒や舞台下の生徒達、次々と驚きの表情を浮かべる。綾乃、目を丸くさせる。

綾乃「え……」

 綾乃の顔色がさーーっと悪くなっていく。

カレン「お友達ごっこのつもり? 残念ですがそのような真似は致しませんので。選抜入りしたからには慣れあいは不要と心得ておきなさい」
綾乃「あ……すみません」

 カレン、ステージから去ろうとするのを怜王が呼び止める。

怜王「カレン。その態度はダメだ。いくらイ級であったとしても綾乃はプリンセス。納得いかないだろうが……」
カレン「ええ、納得いきませんわ。私達はずっと身を粉にしてあなたからのご寵愛を得ようと努力してきましたのに。すべてが水の泡となったのですのよ?」

 カレンら選抜入りの生徒、怜王と綾乃を厳しい目つきで睨む。

美月「カレンの言うとおりだ。私達はキングの手となり足となりご寵愛を受けるべく努力してきたのだ……なのにいきなりヲ級ル級ヌ級を飛ばしてプリンセスになるなど理解が出来ない。私は綾乃が単純に嫌いなわけではないのだ。それは分かってほしい」
選抜入りの生徒達「そうですそうです! キング、私達もいるんですよ!!」

 怜王、めんどくさそうに息を吐く。

怜王「わかった。君達が俺の事を好きなのはすごく理解できた。だけどこの綾乃は俺にとっては命の恩人なんだ。だからプリンセスに決めた」
カレン「命の恩人?」
怜王「ああ、という訳でよろしく」

 怜王、綾乃をお姫様抱っこして舞台袖へと消えていく。綾乃、困惑した表情を受かべる。

綾乃「ちょ、降ろしてもらっても……」
怜王「綾乃、俺が君を守る」

 怜王、真剣なまなざしを綾乃に向ける。その後ろから雄介が2人を見ている。

雄介「……綾乃ちゃん」

 雄介の意味深な表情のアップ。