人が集まる中で結翔くんみたいな有名人がいたらきっと大騒ぎになる。チラリと私は周りを見た。まだ誰も結翔くんに気付いていないみたいだけど、誰かに気づかれたら大変だ。

「結翔くん、遊園地はやめてお家デートにする?休日の遊園地なんて人混みすごいよ」

そう提案するも、結翔くんは首を横に振った。そして吊り革を持っていない方の手で私の腰を抱き寄せる。戸惑う私に結翔くんはニコリと笑って言う。

「プライベートはプライベートでも、胡桃とのデートは別だよ。胡桃とは色んなところに行きたいから!」

テレビでは見せない無邪気な笑顔に、私の胸がキュンと鳴る。そんな「特別です!」とアピールされたら、嫌でも自惚れちゃうよ……。

電車が駅に到着した。私と結翔くん、そして大勢の人が降りていく。目の前にはジェットコースターや観覧車が見えた。遊園地の入り口に近付くたびに、軽やかで明るい音楽が鳴り響いている。

「わぁ、遊園地なんて久しぶり!」

私がそう言いはしゃぐと、頭に何かをつけられる。満面の笑みで「似合ってる!」と結翔くんが言う。マスコットキャラクターの耳がついたカチューシャをつけてくれたらしい。