凪さんが私の左手の薬指にそっと触れる。手つきがまるでガラス細工に触れるかのように優しくて、どこかくすぐったい。

「……本当の夫婦になれると思いますか?」

気が付けばそう呟いていた。まだ十七歳で、結婚なんて普通なら考えられない時期だ。進路が決まっていないという理由だけで、こんなテストに参加している。こんな私と正式な夫婦になりたいと凪さんたちは思ってくれているのだろうか、そんな思いから出た言葉だった。

「それ、本気で言ってる?」

そう言った凪さんの顔から表情が抜け落ちていて、私の背筋に寒気が走る。逃げ出そうと体が動いた瞬間、凪さんに抱き締められた。

「俺たちは絶対に夫婦になるんだよ。夫婦になって、ずっと幸せになるんだ。他の男と結婚なんてさせない。この薬指に永遠の印をつけて、ずっと縛り付けてあげるから……」

凪さんの甘ったるい言葉が脳内を刺激する。気が付けば、私は凪さんの背中に腕を回していた。何だか頭がふわふわする。

その日、凪さんからは最初に試着したネックレスをプレゼントされた。