「俺は、本気でそうなりたいと思ってるよ」

耳元で囁かれ、私の喉元まで出掛かっていた言葉は引っ込んでしまう。心臓がバクバクうるさい。こんなことをされるのなんて初めてで、恥ずかしくて……。

「胡桃ちゃん、借りて行っていい?デートしたくて」

凪さんは友達にそう言い、私を車の助手席に乗せる。シートベルトまで締められてしまった……。友達の方をチラリと見れば、顔を真っ赤にしながら私にグッドサインを送っている。

「さて、胡桃ちゃんは行きたいところとかある?」

運転席に座ってそう言った凪さんに、私はじっとりとした目を送る。多重婚テストのこと、何にも話していないのに……。明日になったらきっとみんなに説明しなくちゃいけなくなるじゃん。

「……私、皆さんとのテストこと秘密にしてるんですよ。学校に来られたら困ります」

そう言い頰を膨らませると、凪さんの細くて長い指が私の頰に触れる。「ごめんね」と眉を下げながら凪さんは謝った。

「健吾さんが二人きりでデートした写真を見て、俺もしたくなっちゃったんだ。こんなに困らせるとは思わなかった。ごめんね」