「皐月くん!お待たせしました」

「ううん。急にごめんね」

「全然!でも二人で会うの初めてだし変な感じするね?」

「なに意識してんのー」

「してないから」

「ごめん、このままココ入っていい?」

皐月くんが店内を指さした。

「うん、いいよ?」

皐月くん、もしかして歌いたいだけってことはないよね?

さっさと歩いていく皐月くんを追いかけて、受付カウンターに行った。

皐月くんが二時間を指定して、
幅の広いレシートみたいな物を受け取った。

二人なのに四、五人で使えそうなくらいのカラオケルームに通された。

曲を入れたらカラオケ画面に切り替わる液晶テレビで、今はアーティスト達がリリースした曲の紹介をしている。

皐月くんはその音声をオフにした。

「なに飲む?」

「えっ?えっと、じゃあメロンソーダ」

「ぼくもそれにしよっと」

タッチパネルで皐月くんがドリンクをオーダーしてくれた。

そのドリンクがカラオケルームに届くまで、二人とも何も話さなかった。