「副社長のスケジュールを拝見したところ、午後2時から時間が取れそうなので、その時間に対応されるのがよろしいかと思います」

「分かった、穂花。ありがとう」


甘い声でそう告げたまま、副社長はまだ手を伸ばしている。

だから苦しくなった私は、さらに抵抗をする。


「副社長、今夜はロイヤルクラブ会員の東京百貨店社長との会食です。

それまでには……」

「そうだった」


副社長は私に手を伸ばしたまま、はっとした顔になる。


「俺、今夜、予定あるんだった」

「……え?」

「会食はまた今度でいいだろ?……な?」


な?って私に同意を求められても……

しかも、東京百貨店社長なんかとの会食を延期するだなんて……