振り返った早瀬が、背を屈めて私の顔をのぞきこんでくる。
「大丈夫かよ」
「うん……」
ありがとうなんて言わない。
けど、好奇と軽蔑の視線がひっきりなしに飛び交うこの教室の中で、私の心の内を最も汲み取ってしまったのは早瀬だった。
誰とも話したくない。
消えたい。
透明になっちゃいたい。
すると、早瀬がおもむろに手のひらをこちらに伸ばしてくる。
とおもえば、大きなそれを、まるで世界から隠すように私の顔の横に添え、くちびるを合わせきた。
「ちょっ」
突き飛ばし、急いで周囲を見まわす。
幸い人も少なく、みんなそれぞれ昼食を楽しんでいるようだった。
なにより、目立たない端の席でよかった……。
安堵したあと、あらためて早瀬を睨むけど、この男はそれすら養分にするみたいに笑い返してくる。
「もう、キスするのやめ──」
刹那、教室内で金切り声が響き渡った。
「なんで?!なんでよ新山!!」



