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昼休みに入り、まっさきに私の席へ来たのは仁奈だった。
しかし見かねた早瀬が割り込むように目の前に立ちはだかる。
「ちょっと、ジャマなんですけど〜」
早瀬の背中越しに聞こえる仁奈の声は、いつもどおり。
のようで、すこしだけテンションが低い。
「おまえさァ、平石のトモダチなんだよな?」
「そーだけど?大大大親友〜☆だからさっさと退いて」
「なら察せよ。いまの平石の状況で、誰かに声かけられるコト自体がどんだけ怖ぇのか、大親友のくせにわかんねぇの?」
仁奈へと放ったその言葉におどろいた。
まるで私の心を守るみたいな、早瀬らしくない言葉だったから。
「大親友だから声かけるんでしょ?なんなん?まじうざい。茜のことキモイ目で見てるやつがずいぶんとえらそーですね」
「見てるよ?だから分かんだよ。なにも言わず、ほとぼりが冷めるまでそっとしておいてやるのが、現時点で平石にしてやれる一番の優しさだ」
「わかったよーなこと言うなよ。そばにいてあげなきゃ、茜は……」
「今はそのタイミングじゃねぇって言ってんだよ。平石の心に余裕ができて、誰かに寄りかかれるようになったら。そん時にいくらでも胸貸してやればいいだろ」
黙り込む仁奈。
普段から飄々と言い返してしまう彼女にしてはめずらしいほどなにかを言いあぐねているようで
「茜……」
なーに、と。
返事をしてあげたいのに、締めつけて動かない喉の苦しさが、すべてだった。
こわい。
仁奈に、どう思われているのかが。
「わたし、茜のこと信じてるから」
「……」
「茜も、わたしのこと信じてね」
ひどく凪いだ、しかし祈りの滲む声音。
泣きそうになり慌ててくちびるを噛む。
早瀬の背中のうしろで、遠ざかる仁奈の足音を聞いた。
ごめん……仁奈。



