無意識に、足が後退する。
じんわりとした胸騒ぎ。
新山くんの凪いだ表情が、いやにおそろしくて。
なのに、逃げるなとでもいわんばかりに横から手をとられてしまう。
「あこがれなんだ」
無垢な瞳が、私を刺す。
「俺も、好きな人と一緒に死にてぇ」
"好きな人"
それが誰のことを指しているのか、言われなくても分かってしまう。
「ふたりでさ、重なり合って、死んだあとも血液すら同化して、離れられなくて。物理的にも精神的にもお互いから逃げることのできない終わり」
「……」
「そんな最期を大好きなやつと迎えられたら、どれだけ幸せか」
「……」
「なぁ、平石」
「……」
「言いたいこと……わかるよな?」
「……っ」
「死ぬならおまえとがいい」
おだやかな声音。
繋がり軋む手。
「俺が死んだら平石も死ぬ。その逆だって望ましいよ」
「わた、しは……」
「なにも言わなくていい。どう思っていようと、おまえのことは誰にもやらねぇから」
ふんわり、頬を包まれる。
こわいくらい優しいキスを降らされた。
いつか新山くんに迫られた、極端なまでの命の結合。
その根源を目の当たりにしてしまった今、彼の言葉にうなずくことがどういうことなのか。
新山くんを大好きであればあるほど理解できてしまい、この身に重くのしかかってくる。
歪んでしまった、死へのあこがれ。



