「ちがうよ!ジュースおもいっきりこぼしちゃってさぁ、ほんとドジでいやになるよ〜」
「いつこぼしたんだよ。見たかぎり、佐山とずっと楽しそうにしてるだけだったけど」
「そ、れは」
新山くん、ずっと私のことを見ていたの?
本来ならキュンキュンするはずなのに、ときめきより先にきたのはゾクリとした粟立ち。
悔しかった。
あきらかな新山くんへの気持ちの変化を、新山くんによって思い知らされている。
「はしゃぎすぎてバシャー!ってやってしまったんだよね、アハハ。私も仁奈も調子に乗るとおバカやらかすからさぁ」
「平石……」
「さ!早く帰ろ!なんか曇ってきたし、雨とか降ったら新山くん濡れちゃうし!」
新山くんの言及を遮るように手を引いて歩き出す。
空には黒い雲が浮いていた。
私の嘘を、咎めるように。
「平石」
「うん?」
「おまえが許しても、俺は許さねぇから」
「……」
「平石を傷つける人間なんて、いらねぇ」
私のために、本気でそう言い放つ大好きな人。
この激しい鼓動が、どうかまだ恋であるようにと願いながら、振り向く。
「ありがとう新山くん、だいすき」



