今日の一件は俺が全て仕込んでいた。

正確には、桜が俺のになる予定だったが。


桜を嫌っていた女子たちを買収した。

本来なら買収なんてしなくても、言うことを聞かせるなんて簡単だったが……あのクソ野郎のせいで、女たちは怯えてそう簡単には行かなかった。

桜に対してあんなことをしたんだから、アイツらはほぼ退学確定だろう。


作戦がうまくいっていれば、止めてやることもできたが……失敗した上にアイツらの仲がよくなってしまったのだから、大人しく出ていってもらわなくては。


ベンチに寝転がりながら、空を眺める。

桜と出会って、恋してからなんだよな、こんなに綺麗に見えるようになったの。


親から十分に愛情をもらえなかった俺をたくさん愛してくれたのはいつだって桜だった。


「桜……」

「あの」

「……誰だ」


声をかけられてバッと起き上がった。

見覚えのない女子生徒がそこには立っている。


……見るに……桜と同級生か?


「美山桜子です」

「桜子?」


ああ、あの桜と猫カフェに行っていた……。


「なんのようだ?」


睨みつけながらそう聞いた。これでビビらない女はいない。だけどコイツは真っ直ぐ俺を見つめながら、いや見下しながら低い声でこういった。


「桜ちゃんに手出さないでください」