腹黒王子様の溺愛が規格外。



次に目を覚ますとピンクのカーテンに包まれている場所にいた。

居心地の悪いベッドから起き上がって、横を見る。そこに桜はいない。


代わりにいたのは、憎くてたまらない女だった。


「だ、大丈夫ですか?」


手を伸ばされる。


「触るな気持ち悪い」


それだけ言ってそっぽを向いた。本当に気持ちが悪い……桜にあんなことをしておいて、今度は僕を奪って悲しませようとでもしてるのか?

本当、桜の妹とは信じがたいな。


「……桃瀬さん

「!な、なんでしょうか……!」

「僕のことが好きなんだ?」

「へっ……!?あ、はい……!ま、前にお見かけして、とっても美しい方だと思って……」

「へぇ、それなら一つ質問していい?」


こんなヤツなんかとは話しているだけで虫唾が走るが、仕方がない。

これも桜のためなんだ……。


「はい!」

「桜をどうしていじめるの?」

「……え?い、いじめてなんか……!ないですよ!」


……思っていた通りの返事だな。


「これ、見て欲しいんだ」

「え?」


スマホを差し出す。コイツになら引かれようがなんだろうがどうだっていいので、桜の部屋で撮った録画を見せた。


「可愛い桜の部屋に入ってきて……髪を引っ張ってるね、これだーれだ?」

「っ……!わ、私じゃなくてお母さんだし……!!」

「じゃあこれは?桜のぬいぐるみ、ズタボロにしてるところだよ」


またしても勝手に桜の部屋に侵入し、クソ兄貴から貰った大切なぬいぐるみを切り刻んでいるところ。

元々はとても綺麗な少し高級なぬいぐるみだったのに、今じゃ桜が着れなくなった服を切って直したボロボロのぬいぐるみだ。

まあ……僕はそんな姿でも、桜に作り直してもらったという事実がとても羨ましいが。