腹黒王子様の溺愛が規格外。

この子は僕のだ、と言わんばかりに先輩を睨みつけた。


「うわ、そんなに威嚇しないでよ。ここ廊下だよ?」

「知ってますけど。威嚇なんてしてないし。いこっか桜」

「えっ……あ、ご、ごめん私書類先生に持ってかないといけないから!」


手を振り払われる。走って行ってしまった桜。

1人取り残される絶望感がものすごかった、けど追いかけていいのかもわからない。


もしかして、嫌われた……?



「もしかして倦怠期?なら俺チャンスかなー」

「……浮気されたんですよ」

「……あの可愛い子が浮気?確かにあんなに美人なの滅多にいないからね〜あ、でも桃瀬陽菜ってのもおんなじぐらい美人だよね。あ、噂をすれば」

「一条様!」


名前を呼ばれる。ちがう、桜じゃない……。


身体の力が抜けてふわふわする……桜、ああ桜……。


「っ、おいお前大丈夫かよ」


三上先輩に支えられる。これはやばいな、本当倒れる。睡眠時間は十分に取れているというのに……。


いやでも、桜と再会する前はこんな感じだったか。


だんだんと離れて行く意識に不安を覚えながら、目を瞑った。