腹黒王子様の溺愛が規格外。

丁寧にリボンを付けられる。蓮くんは本当に器用だな、なんて思いながら、手を繋いで空き教室から出た。


するとそこには……


「陽菜、ちゃん……?」


先ほどまでの幸せな感覚が、一気になくなってしまった。


「お、お姉ちゃん、何してたの……?」

「行こう、桜」

「あっ……うん」


蓮くんに少し強引に腕を引かれて、されるがままに歩いていく。

けれど、反対の腕をものすごい力で掴まれてしまった。


「ご、ごめんね、急いでるんだ……」

「お姉ちゃんは私のことがどうだっていいの!!?」


また始まってしまった……私がいつも通りに悪役になってしまう。

きっと、昨日の一件のせいで一部の人間からはもう、嫌われてしまっているだろうし……とっくに、諦めている。


けれど、今日は違った。


「桃瀬さん」

「っ……!は、はい!一条様!」


蓮くんが話しかけるや否や、尻尾を振る犬のように釘付けになった陽菜ちゃん。

ズキッと胸が痛むも、私は蓮くんを信じている。


怖いことなんて、きっとない……それほどに、もう蓮くんに溺れてしまっていた。