「じゃあぜひお願いします!」

「ええ!じゃあそちらの椅子にお座りください」


鏡の前にふかふかの椅子が用意されている。

そこに座り、髪を溶かしてもらった。


「ふふっ、とてもいい髪質をしてらっしゃいますね」

「そ、そうですか?それは嬉しいです……!」

「髪の毛、巻いてさらに可愛くなったら坊っちゃんも喜びますよ」


そんなこと言ってくれるだなんて、嬉しいなぁ。


髪をいじられるのは悪くない。本当のお母さんはよく私の髪を結ってくれたな。


両親の仲は悪くなかった。

私と弟、お父さんとお母さん。

家族はみんなとびっきりの美形だ。だから私も、顔に自信がないわけではない。


ただ、つり目でちょっとキツいと思われていないかは心配だけれど。


そんな家族は、とある女によって崩壊された。


名前も聞いたことはないけれど、お父さんのことを熱烈に愛していてお母さんにひどいことを繰り返していたらしい。