車から桜の手を引いて降りる。


「す、すごい……!!」


目を輝かせる桜。このぐらいどうってことないと言うのに。

だけど、桜のキラキラした表情を見れたことがとてつもなく嬉しくて、つい笑みを溢した。


「行こうか」

「う、うん……!」


繋いだままの手を引いて行く。


屋敷の重たい扉を開ける。靴を脱ぎ予め用意しておいた桜専用のスリッパを差し出す。

それと共に、近藤が現れた。


「坊っちゃん。お帰りなさい」

「ただいま」


近藤はとても優秀な使用人だ。第二の母親のような存在でもある。


「桜さんも、おかえりなさい」

「あ、た、ただいまです……!これからお世話になります!」


深く頭を下げた桜もまた愛らしい。


「私は近藤由恵、長年坊っちゃんのお世話係を務めさせていただいております」

「桃瀬桜です」

「聞いていますよ、とっても素敵なお嬢さんらしいじゃないですか」


ふふふと優しく微笑んだ近藤に安心したのか、桜の身体の力が抜けていっていることに気がついた。