数分後、早く桜に会いたくて浴槽から出た。


……あ、服用意するの忘れた。

今日は近藤は休み。佐々木もまだ忙しそうなので、服を用意しなければいけなかった。

幸いパンツとズボンはあるものの、これじゃ上裸になってしまう。


まぁいっか、部屋までぐらい。

少し寒いだろうけど。


そんな浅はかな考えで髪を軽く拭いて着替え、歩いていると……。


「蓮くーん!」

「さ、桜!?」


僕の姿になんて全く気がついていない桜が、ぎゅっと嬉しそうに抱きついて来たのだ。


「本、ありがとう!前から読んでみたかったのばかりで嬉しかったよ!」

「そ、そっか」


プレゼントというのは大量の書物だった。



だけど今はそんなことどうでもいい。


「……あれ、なんだか肌触りが……」


やっと気がついたら桜は慌てて僕から離れ、顔を真っ赤にさせる。


「ご、ごごご!ごめん!!き、気づかなかった!」

「ううん、全然大丈夫だよ」

「そ、そっかそれならよかった……」

「じゃあ着替えてくるね」

「う、うん!」


はーー……死ぬかと思った。

こんな格好の状態で桜がスリスリしてきて、耐えられるのなんて俺ぐらいだろう。

絶対この世に存在しない自信がある。


急いで部屋に入り、スウェットを取り出して着替えた。


これで一安心。


「れ、蓮くん着替えられた?」

「桜。うん、終わったよ」



廊下から可愛らしい声が響いて来て、返事をした。


「じゃあそろそろ夜ご飯食べよっか」

「うん!」


こうして夕食を済ませに向かった僕らだった。


そして迎えたパーティー当日の日。

車の中で待ち合わせをしていた。

桜の身支度が整って、やっとその可愛らしい姿を拝めると思えば……。


「さ、桜……かわっ……かわいい……」

「え、えへへ……」


いつもとは違った大人っぽい髪型。

ワインレッドのオシャレなドレス。

この上ないぐらい、可愛らしい……いや、美しかった。

……だけど、少し肌の露出が多めの服だ。



「すごく似合ってる。けど、これ着ておこうね」


来ていた燕尾服のジャケットを桜に羽織った。


「ず、ずっと?」

「うん、こんなに桜の肌他の男に見せたくないんだ」

「そっか」


少し残念そうにも、嬉しそうにもした桜。


「……私も、蓮くんが髪かきあげててカッコいいの……誰にも見せたくないな」

「っ……」


あまりにも可愛らしいことを言うので、つい口付けてしまった。


「れ、蓮くんの口紅着いちゃったよ?」

「本当だ。流石に口元のは拭くけど……桜、ここにもう一回つけて」

「えっ」

シャツを少しはだけさせて首筋を指差す。