「桜……」


名前を呼ぶと、起こしてしまったのか目が開いた。


「一条、さん……?」

「そうだよ、大丈夫?」

「は、はい……」


まだ少しボーッとしている桜の手を握り目の前まで持ってくる。

胸が躍る。こんなに感情が昂ることなんて滅多にない。


桜の腰に手を回して、ぐっと距離を縮めた。


「あ、あの一条さんっ……?」

「蓮って呼んで。同級生なんだから、敬語もなしだよ」

「わ、わかった……よ……蓮、くんでいいかな……?」

「うん、ありがとう嬉しい」

「っ……!」


思わずふにゃっと笑ってしまった。桜の前にいると、自分が自分じゃいられなくなる。


「あ、あの……助けてくれてありがとう……あと、学校で変なこと言ってごめんね……!!」


そんなことを気にしていたのか。

桜にあんなことを言われて……正直今日は命日かと思ったが……どうにか生きていられるらしい。


「変なことって何?嬉しかったよ」

「そ、そう、なの……?じゃあ一つ聞いてもいい……?」


俯きながら可愛らしく僕を見つめてくる桜に限界が来そうになりつつ、冷静さを保ちコクッと頷いた。