「誰でもいいわけっ……」

「じゃあどうだよ、お前一時ぐらい俺のこと好きな時期あっただろ」

「えっ……」


そう、なのかな……?

確かに秋ちゃんは限界が来た時は家に泊めてくれて、温かい料理を振る舞ってくれた。

好きと言うには未熟だけど、否定はできないのかもしれないっ……。


「誰でもいいんだよ、桜は、自分のこと愛してくれれば」


頬を撫でられる。


「ほら、俺が撫でても気持ちよさそうにしてる」

「そんなこと、ないもんっ……」

「あるんだよ、気づいてないだけで」


ないよ、ないないない……!!!


だって、だって……!!蓮くんのこと、本気で好きで……キスされても嬉しくて、触れられるのも幸せで。

そうだよ、だから私が好きなのは蓮くんで……。


キッパリ言おう、だってこれは私の大好きな蓮くんのためなのだから。


「私は蓮くんが好き!!助けられたからでもなんでもなくて、普通に恋したの!」


雅くんのことが好きだった私だっているのだから。


「……そうか、残念だな。じゃあこれ使うか」

「え?」


怪しげな瓶に入った液体。

な、何あれ……。


「桜、直接飲むのは怖いよな、俺がちゃんと口移ししてやるから」

「いや私が飲ませます!!」



2人が揉め始める。頭がぐるぐるしてきた。胃が痛い……。


蓮くん、助けてっ……。


ぎゅっと目を瞑った。

だけど、ガチャリと扉が開く音がして、ゆっくりと目を開ける。


「桜は俺のものだから」

「蓮……くん……!」


ポロポロと大粒の涙が溢れ出てきた。

ああ、私助かったんだ……!!


そう思ったのも束の間。


桜子ちゃんが、瓶を持って私に近づいてきたのだ。

やばい、怖いっ……!


「ちょっと待ちなさいよ!!」


この声は……陽菜ちゃん……!?


蓮くんの影から現れた陽菜ちゃんが強引に桜子ちゃんから瓶を奪って床に投げつけた。


「アンタ……!!私の大事な姉貴に何してんのよ!!!」


今度は胸ぐらを掴んで、大声を上げる。