目を覚ました先には、秋ちゃんと桜子ちゃんがいた。

なんだ、誘拐されたわけじゃなかったのかと呑気にほっとした私。


そして気がついた。鎖に、繋がれていると……。


「……なに、これ……」

「桜ちゃん、起きてくれてよかった。さっそくだけど、私か出雲さんか選んでくれる?」

「……え?」


選ぶ?どういうこと?

ふと思い出した。私をいじめている人はこの2人だと言っていた蓮くんのことを。


も、もしかして直接私に何かするつもり……!?

恐ろしくなって、目に涙が溜まってきた。


そんな涙を、そっと拭った秋ちゃん。


この人も、敵なのに……幼い頃から一緒にいた安心感で、どうにかなってしまいそうだっだ。


「なぁ、桜」

「な、なぁに?」

「俺だよな」

「え?」

「私だよね」


そんなの、選ぶ前に私には蓮くんがいる……!!

答えは決まっているのに、それを言ってしまえば何か恐ろしいことが起きるんじゃないかと手が震えた。


「こんなの、おかしいよっ……返して……」

「俺だってこんなことしたくてしたわけじゃない。でもお前が俺のこと全然見てくれないからこうするしかなかったんだ」

「っ……」

「そうだよ桜ちゃん、私ずっとあなたのことが好きだったの。優しくて、私のことを見つめてくれた桜ちゃんが大好きなんだ」

「「だから一条なんかやめて」」


一条なんかって何……?

「2人とも……私のこと助け出してくれたわけじゃないのに調子乗らないでよ!!!」


怒鳴り上げてしまった。こんなに大きな声を出したのは人生で初めてかもしれない。


「それは俺だって後悔してる、もっと早くに助けてやれればよかった」

「……ねぇ桜ちゃん」

「……」


こんなことをするなんて、最低だ。

2人を睨みつけた。


「それってさ、つまり自分のこと助けてくれたから一条さんのことが好きってこと?」

「……え?」

「誰でもよかったってことなんじゃないの?」


そう言われた瞬間、胸がモヤっとした。

ちがう、この感情はそんな軽いものではない。

いや、助け出してくれた……その事実だけで好きになったって、立派な恋じゃないか。