「失礼しましたお義母さん。僕たち、婚約者なのですよ」


私を支えながらゆっくり立ち上がった一条さんを見上げる。

婚約者……?


「もうお義父さんとは話をつけています。今日は桜を迎えに来ました」

「えっ……!?」


お父さんと話ついてる……!?

まさかそんなことになっているだなんて思わずに、開いた口が塞がらない。


「ちょ、ちょっと待ってください!桜はあなたに釣り合わない……!!婚約なら、陽菜の方に!!」

「じゃあ帰ろっか、桜」


優しい声。

帰るって、どこにって思ったけど……でも、あなたと一緒にいられるならって思っちゃって……。


「かえ、るっ……」

「うん、いい子だ」


ずっと私のことを支えてくれていた一条さんが、ひょいっとお姫様抱っこしてくれた。


「お……おい、ちょっと待て」

「……なんですか?お義兄さん」

「こんなの、勝手すぎるだろ……!桜は渡せない」


お兄ちゃん、なんでそんなこと言うの?


「私のこと、嫌いなくせに……!!」


思わず睨みつけてそう言ってしまった。


「っ……!!」


ひどくショックを受けたようなお兄ちゃんの表情。

心が少し痛みながらも、だんだんと睡魔が私を襲う。


疲れちゃったなぁ……私、今まで頑張ったから……一条さんに、助けてもらえてよかった……。