椅子に腰掛けて、目の前にあるパンからいただく。

外はさくさく、中はふわふわ……たまらなく美味しい。

間違えなく、今まで食べたパンの中で一番だった。


「美味しい……」

「ふふっ、でしょ」


自分の席に座りながらにこにこに微笑む桜が、もうだんだんと怖くなっていた。

どれだけ優しいのよ……あり得ない。


でもさっき言っていてとおり、私が妹じゃなかったら本気で恨んでたんだろうな。

純粋だけが取り柄ではないもの、桜は。


「……桜、ほんとにありがとう」

「らしくないね。私なんか微力でしかないけど、助けるよ、陽菜ちゃん妹だし」

「……そう」


初めてコイツの妹でよかったかもしれない。

いや……小学生の頃は尊敬していたけど。


「……ストーカーの人の顔は見たことある?」

「ない。あ……ちょっとだけ、見えたかも。でも赤の他人だった」

「そっか……うーん……お互い大変だね。私も最近嫌がらせされてたし……顔がいいって罪だね……」

「やっぱアンタ自分の顔の良さ自覚してたのね」

「うーん、お母さんとお父さんが美人だったからね」

「あっそ」


でも……自分の可愛さに気付かずうじうじしてるよりは、全然いい。

カッコいいよ、桜。