な、何の音?


何が起こっているの?


バシン!!


あ、、、


たたかれてるんだ


この音は、何度も聞いた


助けなきゃ


誰かが、痛い思いをしてる!!


私は、音が聞こえてくる方向に走り出す


「だ、大丈夫ですか!!!!」


「誰、、、?」


そこにいたのは傷だらけの男子生徒だった


「ぜ、全身怪我してるじゃないですか!!!」


唇は切れ、顔、腕、足には叩かれた跡がある


痛そうだ


私でも、こんなになるまでやられることはあまりない


「は、はやく手当しないと!」


「手当なんていいってこんぐらい
 痛くないし」


どこが、痛くないって?


こんなに体中跡がついているのに?


「俺のことはいいからさ、教室戻りなよ」


こんなに、傷ついている人を見て見ぬふりをしろって?


「だめです、手当します」


「だからいい、、、」


「いえ!絶対します!!」


私はその人の声に被せるように言う


「は?」


「こんなに傷ついている人を、見て見ぬふりなんてできません!!!」


「なんで?俺、お前と知り合いじゃないし
 俺のことなんてお前からしたらどうでもいいじゃん」


「どうでもよくなんかありません!!!」



その人は驚いたような顔をして私を見る


「知り合いとか、知り合いじゃないとか、そういうの関係なしに、心配なんです!!!!」


「、、、、、、」


多分この人は、私と同じなんだ


愛情を知らない


心配されることを知らない


そんな人には、優しくしてあげたいと、私は思う


「わかった、、、いいよ」


「ありがとうございます!!!」


よかった、、、


素直に手当てさせてくれるみたいだ


このままこの怪我を放置しておいたら、腫れ上がっちゃったり、バイ菌が入っちゃったりして大変だから、ちゃんとやらないとね


「顔、見せてください」


「、、、ん」


その人は意外にも素直に顔を見せてくれた


酷い傷だ


かなり深い


私はガーゼに消毒液をかけ、傷口を拭う


「痛かったら言ってくださいね」


「ん、、、大丈夫」