結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

ほっと息をつき、周囲を見ればダークブラウンの家具で統一された店内は大人の隠れ家的な雰囲気があって素敵だった。天井からぶら下がるアンティーク調のシャンデリアもセンスがいい。それに窓の外にはキラキラと光る夜の海。海の上を行き交う船の灯りがよく見える。

ここって穴場かも。ベリが丘にこんなにいい場所があったんだ。

「日本人が初めてコーヒーを飲んだのはいつか知っている?」

南係長に聞かれて首を傾げる。

「明治ぐらいですか?」
「江戸時代です。鎖国していた時だから、長崎の出島のオランダ商館に通っていた商人や通訳たちが最初にコーヒーを飲んだ日本人だと言われています」
「そうなんですか」
「明治は本格的にコーヒーの輸入が始まった頃だそうです。上流階級の人間たちの間でハイカラな飲み物として流行ったらしいです」
「なるほど。南係長、お詳しいんですね」
「ここで知識を仕入れましたからね」

南係長が指した方を見ると棚があり、その上に『コーヒーの歴史』という本が飾ってあった。

簡単に種明かしをする南係長が面白い。
思わず笑ってしまう。

「九条さんは笑った方がいい」
「えっ」
「素敵だから」

眼鏡の奥で瞳を細めた南係長を見てドキッとする。
素敵なのは南係長の方だ。