結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

「あ、あの手を繋がなきゃダメですか?」
「婚約者ですから」

握った私の手を先生がしっかりと恋人つなぎする。
そこまでしなくていいんじゃないのと思うけど、先生が強調するように「今から僕たちは婚約者です」と言った。

「はい」
渋々返事をすると、「桜子、僕から離れるなよ」と釘を刺すように言われた。
いきなり下の名前で呼ばれてドキッとした。しかも話し方が男らしい。先生って親しい人にはこんな風に話すんだ。



先生と入ったスカイバーには着飾った百名程の男女がいて、みんなグラスを手に談笑していた。どうやら立食形式のパーティーらしい。

ミッドナイトブルーのワンピースを着て来て良かった。普段の服装だったら完全に浮いていただろう。

結婚式は既にハワイで挙げていて、親族だけを集めた披露宴も終わり、今日は親族以外の親しい友人などを集めた結婚パーティーの場だという事を先生に教えてもらった。

主役の花嫁と花婿は挨拶で忙しそうで、近くに行ける雰囲気ではなかった。

「少し時間を置いてから挨拶に行きましょう」

先生が私にシャンパンの入ったグラスを差し出したので、受け取った。

「僕たちの再会に乾杯」
私の持つグラスに軽く合わせて先生が言った。

私に会えた事が嬉しそう。きっと婚約者役を引き受けてくれる人間が見つかってご機嫌なんだ。私に会えた事を喜んでいる訳じゃない。勘違いしてはダメ。そう自分を戒め、私もシャンパンを口にする。口あたりのいい美味しいシャンパンだった。

立ち止まってシャンパンを飲んでいると、先生の周りに女性が集まって来た。まるで甘い蜜につられる蝶のよう。あっという間に十人程の女性に囲まれた。

相変わらずおモテになる事で。
つい、そんな嫌味を先生に言いたくなる。