結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

「先生は来る者、拒まずではなかったのですか?」
「そんな事ないですよ」
「そうなんですか。女性に囲まれてちやほやされているのが好きなのだと思っていました」

先生が傷ついたような表情を浮かべる。

「九条さんは僕の事をかなりの女好きだと思っているようですが、誤解です! 遊ぶ女性も、恋人もいませんし、全く興味もありませんから」
「じゃあ、同性愛に目覚めたんですか?」
「違います!」

先生が少し怒ったような顔をする。

「とにかく僕は彼女の結婚を純粋にお祝いしたい。それだけです」

そういう事なら引き受けてもいいか。今、下りのエレベーターに乗ったら、父が一階のロビーで待ち構えていそうだし。一時間ぐらい時間を潰してからホテルを出た方がいいよね。貸切になっているのなら、父もスカイバーまでは私を探しに来ないだろうし。

「一時間だけの婚約者ですね?」
「はい。一時間だけでいいので」
「それで、婚約者のふりとは具体的に何をするんですか?」
「僕の隣で適当に相槌を打っていて下さい。とにかく僕から離れなければいいです」

それぐらいなら出来そう。

「わかりました。先生の婚約者、務めさせて頂きます」
「九条さん、ありがとう」

先生が私の手を握る。
いきなりだったのでドキッとした。