結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

「先生はどっちがいいですか?」
「分けてくれるんですか?」
「一人で二個も食べませんよ」
「九条さんなら食べると思いました」

一人だったら2個食べる。でも、先生がいるからそういう訳にはいかない。

「そこまで食いしん坊ではありませんから」
「僕はコーヒーだけでいいですよ。二つとも九条さんに差し上げます」
「えっ、先生の目の前で二個食べろと?」
「今、慌てて二個食べなくてもいいですよ」
「でも、先生の目の前で食べて感想を伝えなければいけないんですよね?」

ぷっと先生が笑った。

「九条さんは素直ですね」
「もしかして部屋に上がる為に、嘘ついたんですか?」
「はい」

先生に騙された。

「酷い」
「まあ、いいじゃないですか。2個ケーキが食べられるんだから。彼女のケーキは中々食べられないんですよ」
「えっ、パティシエではなく、パティシエールだったんですか?」
「そうです。女性のお菓子職人です。結婚パーティーで会った葉山(はやま)りつこさんですよ」

白いマーメードラインのドレスを着ていた綺麗な女性を思い出した。先生にとって妹のような存在の人だって言っていたな。あの人がパリの名門製菓店で修業したパティシエールだとは思わなかった。