結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

「お久しぶりです」
「本当。久しぶりだね。九条さんが大学を卒業してからだから、４年ぶりになりますか」

目を細めて、穏やかに微笑む先生を見て、相変わらず芸能人顔負けの綺麗な顔立ちだと思った。確か先生は私より10歳年上だから、36歳になるはず。

一目で仕立てが良いとわかるネイビーのスリーピーススーツがさらに先生のカッコ良さを引き立てている。

あの頃と変わらず先生は女性にモテそうだ。先生の隣にはいつも綺麗な女性がいた。研究室にはいつもモデルのような容姿の美しい女性たちが先生を訪ねて来ていた。研究者としては尊敬できるけど、女性にだらしない人だ。だから、私はこの人が苦手だった。

そんな事を考えていたらじっとこちらを見る視線に気づいた。

「何か？」
「九条さん、綺麗になりましたね」
「えっ」

思わず声が低くなる。容姿を褒められるとは思わなかった。

「怒らないで下さいよ。つい、思った事がそのまま出てしまっただけですから。下心はありませんよ」
「怒ってませんけど。先生に何を言われても響かないので大丈夫です」

先生の発言を本気にしてはいけない。ただの社交辞令。この人は女性に甘い言葉を言う人なのだ。

「相変わらず僕の事が苦手だって顔に書いてありますよ」
「はい。先生の事が苦手です」
「ハッキリ言ってくれますね。でも丁度いい」
「何がです？」
「今、僕を苦手な人が必要だったんです。九条さん、僕の婚約者のふりをしてくれませんか？
「はあ？」