結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

「政略結婚が嫌なんですか?」
「妻の顔色を伺って一生暮らす事になるから嫌ですね」
「確かにそれは疲れそう」
「疲れます」
「先生は北沢不動産の偉い人なんですか?」
「祖父が北沢不動産の創業者で、父が今の社長です。会社は兄と弟が継ぐ事になっています。僕は名前だけの役員です。ちなみにこのツインタワーは北沢不動産の持ち物なので、その関係で僕がVIP専用ラウンジとレストランのオーナーという事になっていますが、名前だけですので、大した事はありません」

この立派なツインタワー、北沢不動産の持ち物だったんだ。やっぱり先生とは住む世界が違う気がする。

「まあ、僕のオーナーとしての権力はラウンジのケーキを九条さんに毎日ごちそうできるぐらいでしょうか」

クスッと先生が笑う。笑った顔も美しくて思わずときめく。いけない。いけない。先生の魅力に惑わされるな。

頭をふるふる振っていると、「どうかされましたか?」と聞かれた。

「なんでもありません」
「なんか怒ってます?」
「怒ってません。先生の言ってる事が矛盾していると思っただけです。父から私を守れる力があると言いながら、大した権力はないと言う。本当はどっちですか?」
「さあ、どっちでしょうね」

はぐらかすように先生が笑う。相変わらずこの人は本気なのか冗談なのかわからない。一緒にいると疲れる。やっぱり結婚なんて考えられない。

「でも、九条さんの為なら北沢家の権力を使う事もできますよ。僕と結婚してくれたら全力で守ります」

急に先生が真面目な顔をした。キリッとした表情がカッコ良くて、また無駄にときめいてしまう。