結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

電話ではなく、先生に会って昨夜の事を聞かなきゃ気が済まない。西園寺詩織さんとはどうなっているの? 私のプロポーズを受けたのは本気なんですか? 本当に私と結婚するつもりなんですかって、聞きたい。

階段を下りて、行員の出入口から外に出た。
急ぎ足で歩いて、駅前の通りに出た時、いきなり後ろから腕を掴まれる。
振り向くと黒いチェスターコート姿の先生がいた。

「……先生」
「僕と話す気があるなら桜子が出てくると思って待っていたんだ」
「だから銀行に来た事がわかるように目立つ振る舞いをしたんですか?」
「ただ君と話そうと思って融資課の窓口を覗いただけですよ。そしたら窓口の女性が僕が北沢海人だってわかっているようだったから、桜子に伝わると思ったんです」
「私はまんまと先生の策にかかった訳ですね」
「かかってくれてありがとう」
「バカにされている気がするんですけど」
「そんな事ない。昨夜の事を謝りたかったんだ。桜子との電話を仕事の電話と言ってすまない。いろいろ事情がありまして。でも、約束した土曜日までに全て片付けます。だから僕を信じて来て欲しい」

先生が私の手に白い封筒を握らせる。封筒に書かれた文字で豪華客船のチケットだと気づいた。

「いりません。どうぞ西園寺詩織さんとお幸せに」

突き返そうとしたら、ぎゅっと抱きしめられた。

「桜子が怒るのは当然だ。僕が悪い。中途半端にお見合いなんかしたから。でも、信じて欲しい。絶対に西園寺詩織さんとは結婚しないから。僕が結婚したいのは」

「九条さん!」

先生の言葉と重なるように男性の声がした。