結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

まさか先生と二度目のキスがあるとは思わなかった。

「……キスか」

土曜日の朝のキスを思い出す。
先生の唇は柔らかくてしっとりしていた。キスされた時、驚く程、心が満たされた。大げさに言えば、魂の結びつきを感じるようなキスだった。あんなキスされたら、またキスして欲しいと思ってしまう。悔しいけど、学生時代のトラウマはあのキスで癒された。

――三日後の火曜日、学会から帰ってくるから

今日がその火曜日。
先生はもう帰っているだろうか。

マンションに帰るのが少しだけ怖い。
先生と会ってしまったら、その時は……。

テーブルの上のスマートフォンが鳴った。
着信表示の先生の名前を見て、心臓が強く収縮する。
ドキドキしながら電話に出ると『桜子?』と先生の声がした。九条さんではなく桜子と呼ばれた事が嬉しくてにやけそうになる。だけど喜んでいる事を先生に知られるのが照れくさくて、いつもと変わらない声のトーンを心がけた。

「はい。九条です」
『元気にしてますか?』

三日ぶりに聞いた先生の声はとても優しかった。

「はい。先生は?」
『少し元気がない』
「大丈夫ですか?」
『君に叱られないと調子が出ないんですよ。桜子のしかめっ面が見たい』

なっ……。

「変な事言わないで下さい」

クスクスと笑った先生の声を聞いて、からかわれたんだと思った。
もうっ、先生は相変わらず先生だ。