「海君の事は信じてあげてね。西園寺詩織さんの事は海君がきっと何とかするから。あれは海君のお父さんが一方的に決めた話なのよ。九条さんという婚約者の存在を知らなかったから」
葉月さんはまだ私の事を先生の婚約者だと思っているんだ。
結婚パーティーでそうやって紹介されたままだった。先生、葉月さんに勘違いさせたままだったんだ。
「あの、葉月さん、私、本当は先生の……」
婚約者じゃないと言おうとした時、葉月さんのスマートフォンが鳴った。
「ごめんね。私、もう行かないと」
葉月さんが慌てたように立ち上がる。
「今日はありがとう」
葉月さんは2階の客席から出て行った。
一人になり、テーブルの上に伏せた。
いろいろな事を聞いて疲れた。
由梨花さんか……。
先生、婚約者を亡くしていたんだ。人前で喜怒哀楽を見せる事がなくなる程ショックだったんだ。
大事な人の死が辛いのはわかる。私の場合は母だったけど、母がいなくなって世界が灰色になった。会いたくても会えない事が悲しかった。母の作ったお菓子を食べられないのが嫌だった。
でも、母はレシピノートを残してくれていたから、母のノートを見て作る事が出来た。
お菓子を作っている時は母と一緒にいる気がして気がまぎれた。瑠璃さんに冷たくされても、姫香を可愛がる父を見ても耐えられた。
先生は何だったんだろう。どうやって由梨花さんの死を乗り越えたんだろう。
葉月さんはまだ私の事を先生の婚約者だと思っているんだ。
結婚パーティーでそうやって紹介されたままだった。先生、葉月さんに勘違いさせたままだったんだ。
「あの、葉月さん、私、本当は先生の……」
婚約者じゃないと言おうとした時、葉月さんのスマートフォンが鳴った。
「ごめんね。私、もう行かないと」
葉月さんが慌てたように立ち上がる。
「今日はありがとう」
葉月さんは2階の客席から出て行った。
一人になり、テーブルの上に伏せた。
いろいろな事を聞いて疲れた。
由梨花さんか……。
先生、婚約者を亡くしていたんだ。人前で喜怒哀楽を見せる事がなくなる程ショックだったんだ。
大事な人の死が辛いのはわかる。私の場合は母だったけど、母がいなくなって世界が灰色になった。会いたくても会えない事が悲しかった。母の作ったお菓子を食べられないのが嫌だった。
でも、母はレシピノートを残してくれていたから、母のノートを見て作る事が出来た。
お菓子を作っている時は母と一緒にいる気がして気がまぎれた。瑠璃さんに冷たくされても、姫香を可愛がる父を見ても耐えられた。
先生は何だったんだろう。どうやって由梨花さんの死を乗り越えたんだろう。



