結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

コーヒーショップの二階の席で葉月さんと向き合った。
昨日、南係長に交際を申し込まれた場所だと思うとちょっと複雑だ。

「ここ落ち着くわね」

葉月さんは窓際の席に座ると、興味深そうに店内を見回した。

「大人の隠れ家的な感じで気に入っています」
「いい場所ね。それにコーヒーも美味しい」

本日のブレンドを葉月さんは口にした。今日のブレンドは深煎りのグアテマラ産、マンデリン産、コロンビア産の豆をブレンドした物だった。苦味、酸味、甘味がバランスよくまとまっていて、美味しかった。

「聞いて欲しい話というのは私の姉の事なの」

コーヒーカップを置くと葉月さんが静かに話し出した。
葉月さんのお姉さんの由梨花(ゆりか)さんはヴァイオリニストで、28歳の若さで白血病で亡くなったと聞いて胸が締め付けられた。

「姉はね、海君の婚約者だったの」
「……婚約者」

衝撃的な事実が胸を貫いた。