結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

驚いて南係長を見返すと、眼鏡の奥の瞳が真っすぐ私を見ていた。

「いきなりこんな事言われて驚きますよね。でも、僕は真剣な気持ちです。九条さんとは出会ったばかりだけど、君の事が気になるんです。もっと君を知りたい」

南係長にそんな風に思って頂けるとは思わなかった。
だけど、南係長の事は恋愛対象として見た事がない。

「あの、こんな地味な私の事を知りたいと思って頂けるのは大変、ありがたいのですが……」
断わりの言葉を続けようとした時、私の言葉を遮るように「返事は今じゃなくていいです」と言われた。
「でも、早くお返事をした方がいいと思いますが」
「九条さん、返事は一ヶ月後という事で。僕の事を一ヶ月だけ考えてみて下さい。お願いします」

南係長に頭を下げられて、何も言えなくなった。



マンションに帰って来るとどっと疲れた。
ソファに崩れるように横になった。

ぼんやり天井を見つめていると涙が滲んでくる。

――結婚式は夏ごろを予定していますの

西園寺詩織さんの言葉が耳に残っている。

やっぱり先生、西園寺詩織さんと結婚しちゃうんだ。
私に結婚しようって言ったくせに。

先生の嘘つき……。

私を抱きたいと言ったのは結婚前に遊びたかったって事? そうだよね。先生、プレーボーイだったもんね。毎朝、違う女性がベッドにいるなんて噂話を大学でよく聞いた。

酷いよ。あんまりだ。先生のバカ。
こんなに苦しい想いをするんだったら先生と再会したくなかった。