結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

ベリが丘支店に勤めて二週目の月曜日も慌ただしかった。午後、窓口の対応をしていると、住宅ローンの相談に来た女性に親し気に声をかけられた。

「九条さん! 三友銀行にお勤めだったの!」

お客様の顔を見てハッとした。
先生に連れられて行った結婚パーティーで会った花嫁さん。

確か名前は葉月りつこさん。
先生にとっては妹のような存在の方で、ツインタワーのVIP専用階のレストランとラウンジで提供されるお菓子を作っているパリの名門店で修業したパティシエール。

「葉月りつこさん。ですよね? あの、桜のケーキ美味しかったです」

葉月さんに会ったら、ケーキのお礼を言いたいと思っていた。

「ありがとう。九条さんをイメージして作ったのよ」

うふっと笑った穏やかな笑顔を見て可愛らしい人だと思った。
葉月さんは現在、ベリが丘に一戸建てのお家を建てる予定らしく、その為の住宅ローンのご相談に来てくれた。

「長期間の返済になりますから、金利は抑えた方がいいですよね。当行ですと、金利はこのぐらいになります。返済はこんな感じになります」

返済のシミュレーションを作り、葉月さんに見てもらった。

「ふーん。なるほどね」

葉月さんが真剣な表情でタブレット画面を見つめる。
それから細かい数字の話をして、今日の相談は終わりになった。

「九条さん、ありがとう。とってもわかりやすかった」
「葉月さんのお役に立てて良かったです。また何かありましたら、いつでもご相談下さい」

葉月さんに資料と一緒に名刺も渡した。

「ありがとう。ところで、海君は元気?」

海君とは先生の事だ。

「あっ、はい。学会で今は留守にしていますけど」
「そう。私は九条さんを応援しているからね」

葉月さんの表情がとても心配そうに見える。
心配されるような事があるんだろうか?

もしかして西園寺グループのお嬢様との事?
聞きたいけど、ここでは聞けない。

「あの、葉月さん、個人的に話したいんですけど、いいですか?」

葉月さんがじっと私を見つめ、それから笑みを浮かべた。

「もちろん」

今日、銀行が終わった後、葉月さんに会ってもらえる事になった。