その言葉はどういう意図を含んでいるのかはわからないけれど、彼の生活態度が良くなったのは嬉しいことだ。

留年3回目はこのままの調子だと逃れられるはず……と安堵しつつ、毎日眠たそうに授業を受けている吾妻くんをちらちらと眺める日々を送っている。


「吾妻くんはいつも早いなあ……」


支度をしながら時計を見ると、いまはまだ6時半。

登校がほかの生徒よりずっと早いのは、静かな教室で寝たいかららしい。

よくわからないけれど、野良猫みたいな吾妻くんの行動だから、その理由に妙に納得してしまったのを覚えている。

そんな吾妻くんとは、学校ではなるべく話さないように心がけていたりする。


だって、吾妻くんはいい意味でも悪い意味でも目立つ人だから。