ストレートすぎる幼馴染に翻弄されてます

そして……。


「みぃー!!」


私の、幼馴染でもある。


試合終了の挨拶を終え、ベンチに戻ろうとする選手たちの中で彼…翔ちゃんは元気に手を振っていた。

……校舎3階の窓辺にいる、私に。
声、相変わらず大きいなあ…。

それに控えめに振り返すと、さらにぱあっと顔を輝かせる。
周りはヘトヘトなのに1人だけ元気というか、テンションが高い。

それを苦笑しながら見ていると、不意に隣へとやってきた親友、黒川凛(くろかわりん)がははっと笑った。

「あいつ声大き過ぎでしょ。みんなこっち見てるけど」

「あはは……」

それに苦笑で返し、さっと窓から距離をとる。これ以上見られたくないもん。

「だから試合をうちの高校のフィールドでやってんのに、こっち来たんだ?」

「うん、まあ…こっちの方が日差しに当たらないしいいかなって」

私たちが今いるのは、音楽室。
私立校である天羽ヶ丘(あまねがおか)は、大きなサッカーフィールド場がある。それがしっかり見える位置にあるここは、私のお気に入りだ。

「お?なんか弾くの?」

「うん」

ピアノを弾こうとする私のすぐ隣に座った凛は、「何弾くの?」と聞いてきた。
鍵盤に手を置きながら、私は笑顔で答える。

「エドワード・エルガーの威風堂々」

勝利を手にした幼馴染に、敬意を込めて。